The Ship 批評
評価:心理戦が面白い船上サバイバルゲーム

Last Updated: 2008.11.07 / First Edition: 2008.05.05
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※:2008.10.25のアップデートでバランスがかなり変わってしまった。この批評は主にそれ以前のバランスについて書いている。

●人間同士の裏の掻きあいがメイン

The Shipは、元はHalf-Life1の無料Modとしてプレイ可能だったマルチプレイ専用の対戦ゲームである。それをHL2で使われたSource Engine用に作り直したのが、ここで紹介するSource Engineバージョンだ。なお本作はSource Engineを使っているというだけでHL2のModではなく、単体でSteamからDL販売されている製品版となる。

ルールは簡単で、プレイヤーは閉ざされた豪華客船の乗客の1人となり、Mr.Xからの指示で同じ船にいる指定された乗客を1人殺さなければならない。ただし武器などは全て自分で調達しなければならず、獲物に関しては名前と大雑把な位置しか教えられない。さらに自分自身も必ず誰かの標的になっている。船にいる乗客は全て初対面の人間で、誰が獲物で、誰が自分を狙うハンターかを見極め、誰にも見られずに暗殺を成功させる必要がある。獲物を殺すと報酬を得ることができ、誰よりも早く決められた報酬を集めた者が勝者となる。例えるならHitmanシリーズのマルチプレイ版である。

このThe Shipのような心理戦ゲームは、下手すると誰も一歩も動かず場が硬直してしまうのだが、本作にはそうならないためのアイディアとして"Needs"というシステムが導入されている。これはキャラクターの生理的欲求も満たさなければならないシステムで、例えばキャラクターは時間が経てば腹が減るし、飯を食えばトイレにも行きたくなる。疲れれば布団に入って寝なければならない(これらの欲求は無視し続けると最終的には死に繋がる)。つまりプレイヤーは定期的に必ず隙を作らなければならず、それらの欲求を満たしている瞬間はハンターにとって絶好の暗殺機会となる。この生理的欲求をいかに処理し、逆に相手の隙を突くかはプレイ上で大きな課題となる。



●ゲームの流れ

このゲームで狙うべきことは主に3つあって

  1. 獲物を発見して殺す
  2. ハンターの追跡から逃れる
  3. 無関係の人間に誤殺させてペナルティを食らわせる

これらを他のプレイヤーと読み合いながら達成していくことになる。

ゲームが始まるとプレイヤーたちは各船室にスポーンし、ランダムでアイデンティティ(名前と外見)が与えられる。この時点では装備は衣服だけなので、凶器は自分で確保し、獲物の情報を得て暗殺しなければならない。凶器を含むアイテム類も船内の入れ物にランダムでリスポンするため、これらはプレイヤー同士での争奪となり、凶器を手にする前に別のプレイヤーに狙われると一方的に殺されることにもなりかねない。よって開始直後から各プレイヤーは全力で船内を探索し始めることになる。

凶器を確保したとしても、船内は非常に広い(大体4フロア構造で1フロアがかなり広い)ので適当に歩いていてもなかなか獲物を見つけることはできないが、それをフォローするために、プレイヤーは一定時間ごとに獲物の現在地を知ることができる。ただしこの情報も「ついさっきここら辺にいた」としか表示されず、情報も古くなっていくので、常に獲物の次の移動先(強力な凶器が落ちている可能性が高い場所など)を予測して動き続けなければならない。

獲物がいるであろう位置にも何人かの乗客が固まっていることが多く、獲物に関しては名前しか知らないので、会話をして名前を聞き出していかなければならない。そして会話をした相手が獲物だったからといって挙動不審な様子(相手の方を見まくる、バレバレなストーキングをする)を見せると、物凄く警戒されて下手すると返り討ちに遭う。よって会話をした後も、さも関係ない人間だったかのように振舞って相手を油断させ、獲物が人気のない場所へ移動したときに襲う必要がある。ここはプレイヤーの暗殺センスが問われるようでとても面白い。

実際には獲物を追い詰めたはいいが小便がしたくなって見失ってしまったり、話しかけた相手が実は自分を狙うハンターでそのまま殺されてしまうということがよくある。難しいのは常に獲物を追いつつも生理的欲求を満たし、ハンターの追跡を振り切ることである。

※:現在のバージョンでは武器がどこにでもスポーンするようになったので、武器の争奪という要素は薄くなった。



●必勝法の存在しない戦い

各行動にはそれぞれメリットとデメリットが存在し、トレードオフの関係になっているものが多い。例えば他人と同じ強い武器を使って暗殺しても$100という少ない報酬しかもらえず、逆にマネキンの腕みたいな誰も使ってない弱い武器を使うと$10,000以上の報酬を得られて一気に勝利が近づく。報酬金額は他人が使えば使うほど減り、逆に使われてない武器は高くなるので、レアな武器を探すために常にマップを動き回らなければならない。しかし調子に乗って武器を集め過ぎると警備に捕まったときの刑罰が重くなるので、闇雲に集めまくれば良いわけでもない。

ゲームを始めたばかりの頃は、暗殺を完了した後に警備員の近くや監視カメラの前にいれば安全に思えるが、警備は買収してしまうことができるし、死角から飛び道具で攻撃されると警備は見てくれない。このゲームには安全地帯や安全策というものが基本的に存在しないので、時にはわざとハンターをおびき寄せて撃退するといった方法をとる必要もある。例えばわざと人気のない場所でじっとしてハンターを待つとか。The Shipでは考えれば考えただけ、いくらでもユニークな作戦を実行できる。



●操作性に難

このようにゲームプレイはかなり斬新で、人間同士の騙し合いに時間を忘れてハマってしまうThe Shipだが、操作性に難があるように思える。これは実際の人間のもたつきを再現したのかもしれないが、武器スロットが4つしかない、落ちているアイテムを拾いにくい、キャラクター同士が衝突し過ぎ、ドアが上手く開きにくいなど、慣れてももたつく場面が多い。またダッシュできる時間は限られているので、広い船内をジリジリ歩いていくのが面倒くさく感じることもある。



●Bot

The Shipの現在最大の難点と言えるのがプレイヤー数の少なさで、海外で流行ってる時間帯(日本では早朝)にプレイしても全体で十人ちょっと、といったところでかなり少ない。このゲームはその内容からしてある程度人数が揃っていないと面白くなく、具体的には10人前後が1つのサーバーでプレイするのが望ましい。

というわけでゲームには必ずBotが入ってくるわけだが、実はこのBotの動きは今まで見たこともないくらい人間臭い出来なので、Botならではの違和感というのはあまり感じない。そもそもThe ShipにおいてBotは「その他大勢の群集」として機能してくれればプレイヤーがそれに紛れることが可能なので、人間5 Bot7くらいの割合で対戦しても十分プレイヤー同士の戦いを楽しめる。

ちなみにこのBotがどれくらい人間臭いかというと、わけもなくジャンプしたり突然キャンプしだしたり、後ろ歩きしたままこちらを見ていてあまりの怪しさにハンターと間違えて殺してしまったりと、キャラクターとプレイヤーの名前を照会しないとなかなか判別がつきづらいほどである。欠点と言えば、戦闘になった際に攻撃性や警戒心がなさ過ぎて張り合いがなく実際にはかなり弱いこと、牢獄から出た後スタックしやすいことだが、あくまでプレイヤーの隠れ蓑的な存在と考えれば十分許容範囲だろう。



●Singleplayer

The Shipのシングルプレイには2つの意味があり、一つは元々マルチプレイに付属しているBotだけと勝負するモード。もう一つはSteam上ではマルチプレイと別売りになっている専用のストーリーモードを指す。だがこの別売りのストーリーモードは「チュートリアルの延長」という感じで退屈極まりない。そもそもThe Shipは人間同士で対戦しないと面白味がなく、ストーリーモードはマルチプレイの面白さを全く反映していない。さらにチェックポイントセーブのみなど明らかに手抜きな作りなので、$9.99出して買う価値などない。



●総評

これは面白いし、ほとんどマップ知識と読み合いによって勝負がつき、操作技術がほぼ不要で初心者も参戦しやすいので日本人受けすると思う。実際マイナーながら一時期日本でも流行った。このゲームは発売後に有志の作った日本語化Patchを公式に製品に取り入れたという珍しい経緯をたどっており、現在は最初から日本語でプレイできるのも大きい。買うときは、どうせSteamを通じてプレイしないといけないので安価なDL販売を利用した方がいいだろう。

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