Spore 批評
評価:優れたエディタに作りかけのゲームがくっついた

Last Update: 2008.09.18 / First Edition: 2008.09.18




Sporeというゲームは、発売前からよく分からないゲームだった。話を聞いてみると、どうも惑星で原始生命を進化させて最終的には銀河を征服していくゲームらしい。そして生命が進化させていく途中で「クリーチャーステージ」「集落ステージ」などの各段階をクリアしていかなければならず、それぞれのステージは全く別のゲームらしい。発売前には何度も動画が流れたり講演が行われたが、実際に手にとってみるまではかなり漠然としたイメージを抱かせるゲームだった。

だがゲームをプレイしてみれば別に分かり難いものではないと分かる。要するに、Sporeは自分の創った生命の進化に合わせて以下のようにジャンルを変えていくゲームである。


細胞ステージ 2D Action クリックで細胞を操って海中の他の生物を食いつつ、大物生物からは逃げ、足がついて上陸できるようになるまで進化させる。
クリーチャーステージ 3D Action クリックで陸地を歩き回りながら他の生物を食うか友好関係を築いて脳を巨大化させていき、集落を作れるようになるまで知能を発達させる。
集落ステージ 3D RTS 集落にいる仲間たちを操りながら、釣りや狩りで肉を集めてユニットを増やし、他の生物が形成している集落を滅ぼすか、同盟を結んでいき、勢力を一定以上まで広げる。
文明ステージ 3D RTS 集落ステージより時代が進んだバージョン。戦闘手段が戦車や戦闘機になっており、空や海といった地形も登場する。惑星を統一すると次の段階へ進む。
宇宙ステージ Strategy +
Space Combat
陣地の単位が都市から惑星に変わる。惑星開拓の要素が追加。資源生産やトレード、同盟などの要素がリアルタイムで変化し複雑化。艦隊同士で戦闘になるとSpace Combat Simになる。無限と思えるほど領域が広くステージに終わりはなし。



●細胞〜文明

進行させていく過程で様々にジャンルを変えていくゲーム自体は、別に新しいものではない。このように複数のジャンルを組み合わせてゲームを作る際に問題となるのは、それぞれのジャンルに労力を分散してしまうので1つ1つのクオリティが低くなってしまうということだ。Sporeは8年間も開発期間があったのだからその点は安心かと思いきや、何の捻りもなく同じ過ちを犯してしまっているのだから拍子抜けしてしまう。

全体を通して言えることは、システムが単純過ぎる上に難易度があまりにも低いので、プレイして数分で結果の見えてしまう底の浅いゲームになっていること。しかも悪いことに、そのような結果の見えている作業を何度も繰り返し要求するので、1時間もプレイすれば苦痛で嫌になってくる。

例えばクリーチャーステージでは他の生物を食って進化することができるが、このとき行うべきアクションは「攻撃方法を選択してから敵クリーチャーをクリックし、倒し終わったら死体を食べて体力回復」だけである。後は進化ゲージがマックスになるまで延々とこの作業を繰り返す。集落〜文明は出来の悪いRTSそのもので、何も考えずに資源を集めてユニットを増やし、突撃させれば簡単にクリアできてしまう。ゲームには常に敵対と友好の2つの選択肢があるが、これらは行うアクションが攻撃的か友好的かというだけで、駆け引き内容にはほとんど変化をもたらさない。

細胞ステージ クリーチャーステージ
集落ステージ 文明ステージ



●宇宙

唯一面白いと言えるのは宇宙ステージで、このステージだけは難易度がやや高く、駆け引き内容もいくらか複雑になっている。リアルタイムで種族間の勢力図が塗り替えられていき、放っておくと自分の惑星もすぐ攻め込まれて占領されてしまうアグレッシブなAIが面白い。惑星で生産されるスパイスを他の惑星で売り捌くと大金が手に入り、元手0からじゃんじゃん金を増やしていく宇宙商人的なプレイも楽しめる。惑星を開拓し、同盟を結び、敵を排除していく慌しさの中に休む間はなく、母星から銀河全体へと徐々に勢力を拡大していく箱庭的楽しさは「宇宙版 Sim City」と呼んでいいだろう。ボリューム的にも過去4ステージを遥かに凌ぎ、それまでのステージはオードブルに過ぎなかったと気づかされる。

しかしこの宇宙ステージも、やはり作り込みの弱さが難点となっている。プレイしてしばらくすると、他の惑星から依頼されるミッションが数種類しかないことに気づくだろう。毎回感染した生物を殺せとか、作業的なものばかりだ。また自分は惑星を開拓したいのに、次々と入ってくる救難信号がそれを許さず、好きなようにプレイすることができない。戦闘シーンはやっぱり武器を選択した後はクリックするだけで、避けたり戦術を駆使する余地がない、など。周囲に強敵と呼べる種族がいなくなった時点でやはりルーチンワークになってしまう。それでもRPGでダラダラとレベル上げを続けるような楽しさはあるが、繰り返し遊びたくなるようなものではない。



●通してプレイしてみて

ゲームプレイ部分の総評としては、細胞〜文明は中身がスカスカのクソゲー、宇宙が佳作、と感じた。この構成はバランス的に見て最悪である。映画でも小説でも漫画でも、エンターテイメントというのは最初に客の心を掴んで、そこから最後まで引っ張らなければならない。後半がどんなに面白いと叫んでも、最初がつまらなければそこで客は離れて「つまらなかった」で終わりだ。今回Sporeの宇宙ステージがかろうじて評価されているのは「あのWill Wrightが作った」というネームバリューがあったので根気強く最後まで付き合ってくれた人が多かっただけの話であり、もしそういう肩書きがなければ誰も宇宙ステージまで進まずに終えてしまうだろう。そういう肩書きに頼った作り方は批判されるべきものである。

最初の4ステージはSporeの購入層(ライトゲーマー)を想定してあえて"優しい"ゲームにしただけである、という反論もあるかもしれない。だが私が見た限り、これらは単に中身がスカスカだから結果として初心者でも簡単に扱える内容になっただけであり、プレイしていて純粋につまらないと感じる。優れたゲームは難易度に関係なく奥深いものでなければならない。細胞〜文明までは、表面的な部分しか出来上がっていない作りかけゲームの寄せ集めである。



●優れたエディタ

Sporeにはゲーム部分とは別にエディタがついている。これはFPSやRTSについてくるようなエディタとは違い、ゲーム中に登場するキャラクター、乗り物、建物などを自分で作れるエディタだ。つまりゲーム中に出現し、進化していく生物は自分でデザインすることができる。しかも最初に作ったらそれっきりなのではなく、ゲームの途中でまるで違う生物に作り変えたり、羽を生やしたりと、自分の思い通りに"進化"させていくことができるのである。これがSporeのもう一つの謳い文句だ。

結論から書くと、このエディタ自体は非常に優れており、クリーチャーや乗り物を作っていくだけでもかなりの時間楽しめてしまう。生物を骨格部分から作りこむことができ、想像力次第であらゆるクリーチャーやビークルを生み出し、それらを実際のゲームフィールドに放り込むことができる。詳細はTrial Editionのレビューで既に書いたのでそちらを参照して欲しい。

作った物がオンライン上に自動アップロードされ、さらに他人の作品が自動ダウンロードされるのも特筆すべき点だろう。これによってSporeでは、何の手間もなしに世界中の作品が自分のHDDの中に入ってきて、ゲーム内に自動で反映される。フレンドやコメント機能などもついている。宇宙を旅していて何ともいえない奇妙な外見のクリーチャーに出会ったら、知り合いが作ったクリーチャーがいつの間にか自分のゲームの中に入ってきていた…なんていうこともあり得る。自分の作品が他人にDLされると、その種族が他人のゲームでどのような結末を辿ったのかが知らされるのもワクワクする機能だ。

この共有感覚はYou Tubeやニコニコ動画といった近年の動画サービスに近く、非常に意欲的で面白いコンテンツの考え方だと思う。問題は、エディタがこれだけ優れていてそれだけでも楽しいのに、その結果が反映される実際のゲームプレイがあまり面白くなかった、ということだ。



●総評

数値化するならエディタが90点、ゲームプレイが65点といったところだろうか。複雑なゲームなので足して2で割ることはできないが。いっそのこと、エディタで作った後は全てAI制御で他人の作ったクリーチャーとの生存競争でも見せてもらえる方がよかった。エディタだけ遊びたい人はSpore Creature Creator(クリーチャー・エディタだけ単体で製品にしたもの)で十分。


Spore 日本語版
Spore Creature Creator 完全版




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