細部は改善されたがレベルデザインが味気ない
PCゲーム批評 「Splinter Cell: Pandora Tomorrow」

Last Updated:2007.09.24 / First Edition: 2006.12.09
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●概要

Tom Clancyブランドでも一番人気のシリーズとなったSplinter Cellの2作目「Pandora Tomorrow」である。ストーリーはインドネシアで反米感情が高まる中、過激派ゲリラのリーダーであるスハジ・サドノがジャカルタにあるアメリカ大使館を襲撃するところから始まる。それによる世界危機を防ぐために、再びサム・フィッシャーが呼び出されて潜入任務にあたるというもの。                  

ゲーム内容自体はかなり前作に似通った作りになっており、約1年4ヶ月という制作期間の短さからも分かる通りアドオン的な位置づけの作品である。またこのPandora Tomorrowは前作を製作したUbisoft Montrealではなく、Ubisoft Shanghaiという別チームの手によって作られている。マルチプレイを製作したのもUbisoft Annecyという別チーム。


●多彩なロケーション

この作品は一応続編という名目なのだが、システムやグラフィックにほとんど変化がないのでミッションパックとでも呼ぶべき内容に仕上がっている。本作の最大の良さはロケーションが多彩であることだろう。前作Splinter Cellでは毎回似たようなビルや大使館に潜入しなければならず、飽きさせないような工夫がされているものの、同じようなエリアを歩き続けなければならなかった。そのため雰囲気の変化に欠ける部分があったのだが、Pandora Tomorrowではうっそうと生い茂る木々の中を進むジャングルや、警官に注意しながら先に進むブラックマーケットといった、アジアの国々にありそうな怪しげな雰囲気のするマップを体験することができる。全8ミッション中似たような場所を通ることはなく、本当に色々な地域を渡り歩いていくので冒険をしているような気分を味わうことができる。前作がスパイアクション映画なら、Pandora Tomorrowは「インディージョーンズ」のようなアドベンチャー映画だ。

一番面白いレベルは、デモにもなっている列車への潜入ミッションだろう。高速で移動し、強い風が吹き付ける列車の上を歩いて渡ったり、逆に線路と列車の間に張り付いたり、窓の枠にしがみ付いたまま対抗列車とすれ違ったりと、映画のようなダイナミックな動きに酔いしれることができる。ここはゲーム的にも変化があって面白いし秀逸な完成度だ。

難易度は全体的にかなり下がり、初回プレイ時でも進めやすいように配慮されている。前作にあった分かりにくいパズルは影を潜め、直感的に分かりやすいゴールが設定されているため、「どこに行けばいいのか分からず右往左往する」ような事態は起こらなくなっている。敵配置は非常に素直なものになっており、マップと敵の動きをよく観察して行動すればステルスで美しく抜けることができる。前作は謎解き、ステルスともに高難度で分かりにくいものが多くストレスを感じることもあったが、Pandora Tomorrowは本当に素直な作りという印象を受ける。

それと操作方法が合理的になった。前作ではドアに対してガジェット(ピッキングツールなど)を使う際は、一々装備を切り替える必要があったが、Pandora Tomorrowではドアを開ける際に自動でガジェットを使用することができるようになっている。新アクションには「ハーフスプリットジャンプ」というものが追加され、前作より狭い壁の隙間でも足を曲げてスプリットジャンプ(足だけで体を支えて壁の間に立つアクション)を行えるようになっている。またこの形態からさらにジャンプで高所に上るというアクションも追加されており、これを利用した地理的なパズルも用意されている。

その他の特徴は前作Splinter Cellのものを受け継いでおり、派手なアクションを駆使してマップを進んでいくことになる。前作だけでは飽き足らず、さらに追加のミッションをプレイしたいという人に向いた内容かもしれない。


●デザイン自体は単調

さて、確かにマップそのものは変化が多く視覚的な楽しみも多いが、肝心のミッション内容が変化に乏しい。正確に書くと全8ミッション中、最初の3ミッションは前作のクオリティを引き継いでいてかなり良い出来だが、残りの5ミッションがどれも似たような内容で単調な内容になってしまっている。とにかく巡回している敵がいて、それを影に隠れながら避けて、また敵がいて…という風にレベルデザインが完全にワンパターンになってしまっており、いかにも手抜きという感じで面白くないのだ。ミッションごとのテーマやコンセプトといったものが見当たらないため、そこには無個性なミッションが並んでしまっている。

前作ではハプニングが起こるシーンや激しい戦闘に巻き込まれるシーン、アクロバティックなアクションを連続で繋いで危険地帯を切り抜けるシーン、などが間々に上手く挿入されて緩急をつけていた。だがこのPandora Tomorrowはミッションにメリハリがなさ過ぎる。そのためせっかく様々なマップを渡り歩くことができるのに、ミッションそのものは前作よりも単調で底が浅くなってしまっている。またSplinter Cellならではの複雑なアクションを使うシーンがほとんどない。ラペリングしたままピストルで敵を撃ち抜いたり、ガラスを突き破って建物に潜入するといった、他のゲームにはないアクションが活かされておらず、非常に勿体無い感じがする。

前作は確かに難易度が高いゲームだったが、それはSplinter Cellならではのアクションやパズルを随所に組み込んでいたため、今までこの作品に触れたことのないプレイヤーが直感的に閃きにくいゲーム内容だからであった。逆にPandora Tomorrowでは分かりやすさを優先したために、独自の多彩なアクションを駆使する機会が少なく、一般的な3Dアクションゲームに近い感じになってしまっている。開発チームはSplinter Cellの魅力を完全に理解できていなかったのではないだろうか。


●あまり変わり代わり映えしないグラフィック

このゲームの単調さが浮き彫りになってしまった背景には、前作ほどのグラフィック的な衝撃がなかったというのも大きいのかもしれない。前作があれだけ美しいと絶賛されたグラフィックだったので、当然この作品でも最先端の技術を見せ付けてくれるのかと期待するところだが、Pandora Tomorrowのグラフィックは前作からほとんど変化がない。多少テクスチャの量が増えて表面が滑らかになり、光の表現がそこそこ美しくなった程度だ。2004年にはその後「Farcry」「DOOM 3」「Half-Life 2」と、3Dゲームのグラフィック基準を押し上げる作品が次々と発売されただけに、本作の影は薄くなってしまった。

良くなった点をまとめておくと、サーチライトの光などがより鮮明で美しくなった。また水面には地上のオブジェクトが映り込まれるようになっておりリアリティが増している。前作のデモシーンはそのままゲーム画面を使っていたためジメジメしている上に美しくなかったが、今回はムービーを用いた滑らかでフォトリアリスティックな映像を楽しむことができる。

逆に気になったのは暗視ゴーグルをつけたときの視覚表現で、滑らかで美しい色合いの世界から一転して、ジャギーの目立つノイズが走ったような画面になってしまう。恐らく演出としてわざと画面を粗くしているのだと思うが前作のままでよかったように思える。


●総評

序盤の数ミッションを触る限りは非常に良いファーストインプレッションを得られるPandora Tomorrowだが、後半のミッションは一転して単調でダレてしまうので総合的な完成度は今ひとつ。いかにも外注のアドオンというような内容だ。1周する程度なら最後までそれなりに楽しめたのだが、2周目以降はその単調さが目に付いてしまいあまり面白いとは思えなかった。より幅広いユーザー向けにカスタマイズされた内容は遊びやすいのだが、結果として底の浅いゲームになってしまったのが残念だ。今ならセットパッケージで販売されているし、続編ではなくミッションパックとして見れば楽しめる内容なのでオススメしないわけではないが、Splinter Cellシリーズとしては不満の残る作品だった。


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Splinter Cell: Pandora Tomorrow Review Version 1.0
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