Last Updated:2006.12.10
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解説/攻略

●概要
美しいグラフィックと映画のように派手なアクションが人気を呼んだ、Ubisoftの看板ゲーム「Tom Clancy's Splinter Cell」の3作目。本作も前作と同じく1年という非常に短いスパンで発売されたが、開発チームは1作目と同じUbisoft Montrealが担当している。前作がアドオン的な位置づけであったことを考えると、ゲーム性・技術力共にこのCTこそが正当な2作目と言えるだろう。
今回舞台となるのは中国、韓国、北朝鮮、日本といったアジア地域で、北朝鮮が米国の空母をミサイル攻撃して挑発したのをきっかけに戦争が勃発しそうになり、NSA最後の切り札とも呼ぶべきサム・フィッシャーが呼び出されるという、発売時点での世界情勢を露骨に反映した内容になっている。

●パズルを廃した純粋なステルスアクション
このChaos Theoryは、今までのファンが触ってみるとグラフィック以外にもこれまでの作品と何か違うという印象を抱くだろう。今までのSplinter
Cellは主に2つの要素から成り立っていて「特殊アクションを駆使する地形パズル」「敵を避けるステルスアクション」の繰り返しで進んでいくのが特徴的なゲームだった。だがChaos
Theoryにおいては「地形パズル」の方がバッサリと切り捨てられてしまっており、謎解き要素の少ない純粋なステルスアクションゲームに仕上がっている。より詳しく書くと、ステルスを楽に維持するための手段として所々に地形パズルの要素は残っているのだが、それはあくまでゲームの攻略法の一つというものであり、謎解き自体が目的になっているわけではない。
地形パズルがなくなった結果、何が起こったのか。立体的なマップデザインが可能となった。従来の地形パズルの手法は完全に一本道のマップだからこそ意味があるものだったが、それを廃したChaos
Theoryには立体的な地形が多く用意されている。進行ルートが途中で2手に分かれていたり、一つの巨大な建物を舞台にある程度自由に行動ルートを組み立てることができる。さらにアクション面以外でプレイヤーを迷わせる要素がなくなり、純粋に敵を避けていくことだけに集中できるようになった…初代Spinter
Cellでは、敵を避けても先に進む方法が分からず、結局敵を全滅させてウロウロしてしまうようなことがあったのだ。
また単に選択できるルートが増えたというだけでなく、各レベルにはプレイヤーの思考によって新たな攻略法が生み出せるよう様々な趣向が凝らされていることに気がつく。これまでのシリーズは「狭い通路を巡回している敵がいて、それをどう避けるか」というような、ステルスゲームとしては自由度の低い問いかけをしてくる場面が多かったのだが、Chaos
Theoryではある程度広いエリアに複数の敵や障害物、照明が配置されており、創意工夫によって数多くの攻略方法を生み出せるようになっているのである。
また立体的な地形を自由に進行できるようになったことで、セカンダリオブジェクティブ(任意実行の目的)の導入にも意味ができた。全ての目的を達成しようと思ったとき、プレイヤーは必須の目的と任意の目的をどのようなルートを通って効率的に完了させていくかを考える必要がある。任意の目的はマップの隠しオブジェクトを見つける場合であることも多く、リプレイ時の楽しみにもなっている。
レベルデザインの手法も従来の作品より洗練されている。追加された様々な要素を駆使することにより、多くのミッションにおいて気絶・殺人無しによる完全ステルスクリアが可能になっている。これはステルスゲームの重要な美学の一つであるだけに嬉しい。テストプレイもかなり重ねたのだろう。さらにミッション完了時には総合的なスコアが表示されるようになり、最大100%まで計られる達成率でプレイ内容を評価される。気絶はマイナス評価にならないのでやや甘めの採点方式だが、ステルスの達成感を得られて良い。

●隠密アクションの増加
個人的に今までのシリーズで不満だったのは、素の状態で敵の注意を引き付ける手段が不足していることだった。ステルスゲームはこれがあるのとないのでは、取れる行動の幅が大きく変わってしまう。前作までは何もオブジェクトがない場面では敵の動きを見てタイミングよく動くか、あるいはピストルで壊せる照明を破壊するか、あるいはPandora
Tomorrowで加わった口笛を利用する程度だった。
ところが今回加わったピストルの新機能「OCP(Optically Channelled Potentiator)」は素晴らしい。これは離れた場所にある電子機器(照明、監視カメラ、パソコンなど)を一定時間だけ無力化する機能で、チャージすれば何回でも使うことができる。この機能を使うことにより「敵の背後にある照明を消して、暗闇を作りつつ注意を逸らす」「監視カメラを警戒されることなく無効化する」などのアクションが可能になるのだが、口笛と違って遠距離から敵の注意を様々な方向に逸らすことができるため応用性が高い。効果時間が限られている代わり、しばらくすれば元の状態に戻るのがミソである。後からその場所にやってきた敵に警戒される心配がないし、何より痕跡が残らないのはステルスアクションとして美しい。一度クリアした後、このOCPを駆使して何も破壊せずより合理的にクリアを試みるのが面白い。
特殊ゴーグルには新たに「EMFゴーグル」が加わり、電子機器の位置のみを視界に表示することができる。これによってどこに電子機器があるのか、また電源の位置などはどこにあるのか(配線が見える)を調べることができ、攻略法を考える際の手助けになる。熱源を視覚化するサーマルゴーグルはあまり使わないように見えるが、実は透かせる壁が増えており研究すると面白い使いどころが多い。無線によるハッキングを行える「EEV」も面白い新要素の一つだ。敵が操作していて近づけないコンピュータを遠隔操作して情報を得ることができたり、あるいは無防備なコンピューターであってもモニターの光を避けるために遠隔操作した方が安全になる。さらにこのアイテムはそのまま従来のレコーディング装置にもなるので、アイテム欄を圧迫することを防いでいる。
新しいアクションとしては、手すりの傍にやってきた敵を引き摺り下ろして倒すアクションや、逆に天井のパイプにぶら下がった状態で敵を締め付けるアクションが加わっている。さらにドアを開ける際にも思いっきり開け放して敵を吹き飛ばしたり、鍵を破壊して短時間で開けたり(付近に敵がいなければ短時間で開錠できる)と、選択できるオプションが増えている。そのためステルスにしろ、戦闘にしろ、一場面をクリアする方法がいくつも存在することになり、複雑化した地形との相乗効果によって攻略パターンが飛躍的に増加しているのだ。
インターフェースとしては「騒音メーター」なるものが追加されており、環境音の大きさを正確に把握することができる。これによってそのエリアでどれだけ音を立てても敵に気づかれないかが分かるようになっており、例えば船のエンジンルームなどは騒音が大きいので足音を立てても大丈夫ということになる。場所によっては音による行動の制限が少なくなるので、非常に興味深い要素である。

●技術力も大きく向上
敵AIも進歩しており、行動はより自然になった。従来どおりの足音に段階的に反応するし、主人公の姿がどれだけ見えたかによってそのまま放置したり、探索にきたりと反応を変える。またライトが壊れて暗闇になると松明やフラッシュライトを出すといった動作も加えられており、単に照明を破壊したから見つかりにくくなるという単純なものにはなっていない。さらにコミュニケーション能力が向上しており、探索に行くときは周囲の敵と一緒に行動しつつ「何か見えたような…」「誰かいたのか?」「分からないから不安なんだよ」というような会話をすることもある(ちと会話パターンが少ないが)。
またグラフィックはまさに初代Splinter Cellの再来とも言うべき革新的なものになっている。人物や壁の質感が向上しよりリアリティを感じられる画質になったのはもちろんで、フィッシャーのアニメーションも大幅に増えてアクションはより迫力あるものとなった。だがChaos
Theoryのグラフィックの真価は、PC版限定で選択できる「SM 3.0モード」で発揮される。プログラマブルシェーダー3.0に対応したビデオカードでこのモードをONにすると選択可能なビデオオプションが増え、よりリアルなグラフィックを味わうことができるのだ。
まず影生成には全てソフトシャドウが使われるようになり、単にキャラクターの影を地面に伸ばしたものではなく、ジャギーの目だたないボンヤリとしたリアルな輪郭が生成されるようになり、これがセルフシャドウなどにも適用される。影の表現が特に分かりやすいのは日本ステージで、すだれの向こうにいる敵の影がリアルタイムに投射されてすだれに影が映りこむ様子などを見ることができる。
今まで擬似的なものだったHDR(High Dynamic Range)には、擬似ではなく本物のHDRが使われるようになり、突然明るい部屋にやってきたときの「ぼやけ」や、徐々に光に慣れていく様子などがリアルに再現されている。特に分かりやすいのは暗視ゴーグルをつけて一時的に強い光を受けたときだろう。装着直後は増幅された強すぎる光を見てしまうために周囲が真っ白になるが、しばらくすると視界が安定してきて周囲の様子がハッキリと見えるようになる。
レンガの凹凸などには、従来のバンプマッピング(実際は平らな壁に凹凸があるように見せる技法)の進化系であるパララックスマッピングという技法が使われており、より壁の凹凸感が強調され尚且つ自然に見えるようになっている。SM3.0モードでプレイする際は壁際に寄ってよく観察してみるといいだろう。
欠点としては、SM3.0モードでは通常のマップローディングとは別に専用のロード時間が入ってしまうことである。この時間は結構長く、ミッション開始後にすぐ固まり15秒くらいのロード時間が入ってしまう。ちなみにこの時間はマップのロード時間より長い。またキャラクターの表情がかなり固く、特にアップになることの多いフィッシャーの顔は変化が少なくまるで石造のようだ。「Half-Life
2」の感情豊かなキャラクターを先に見ていると、そのへんに違和感を感じる。

●細部のバランスに疑問
何度かプレイしなおした際に特に感じたのだが、ゲームのテンポがさらにスローになっているように感じられる。特にこれは任意目的が新たに追加された影響が大きく、これを達成するために配置されている大量のコンピューターなどを一つずつ調べたりしているとかなり時間がかかる。初回プレイ時であっても、マップをよく探索するために任意目的を達成するために用意されたエリアをうろついたりしていると時間がかかるし、ちょっと1ミッションのボリュームが大き過ぎるように感じる。そのため途中でダレてしまう。これには自由度が高いマップ構造になったことにより、プレイヤーの通るルートが限定できなくなり、今までのような派手な演出が減らされてしまったというのも影響しているかも知れない。Chaos
Theoryは10ミッション構成なのだが、12ミッション程度に分割した方が良かった。
それと弾薬バランスが適当臭い。難易度を低くするためか大量にガジェットが用意されており、普通にプレイする分には余ってしまう。ミッション開始時に「通常装備」「隠密装備」「戦闘装備」の3種類から選ぶことができるのだが、無条件に敵を気絶させるスティッキーショッカーなどが隠密装備に固まっているため、他を選ぶ理由がほとんどない。難易度にはNormal,
Hardに加えてExpertが追加されたが、相変わらず変更点は敵の命中率上昇程度であり変化が少ない。高難易度ではガジェットも減らされるのだが、元々大量にあるものを1,2個減らされる程度なので相変わらず装備が余ってしまう。
●非常に面白い協力プレイ
これまで賞賛してきたシングルプレイモードは、実はマルチプレイをするための下準備のモードに過ぎない…などと書いたら開発チームに撃たれてしまうだろうか。いやはや、Chaos
Theoryのマルチプレイは素晴らしい。本作のマルチプレイには前作からある「対戦モード」と、新たに加わった「協力モード」があるが、ここで語るのは協力プレイの方だ。
私は常々、人間同士における協力プレイ(COOP)では、誰かが何かをする場合に仲間がそれをカバーするのは当然だと思っている。例えば先頭を進む仲間についていく場合は、背後にいる人間が左右や後方を警戒するべきだし、常にお互いの役割を考えながら行動するべきだと感じている。それこそがチームワークであり、AIには真似できない人間の大きな柔軟性だと思うからだ。ところが実際のゲームの協力プレイでは、ゲーム内容もそれをプレイする人間もそういったことを意識していないことがほとんどだ。COOPとは単に人数を集めて大量の敵相手に撃ち合うものがメインになっており、確かにそれはそれで楽しいのだが、もっと人間という最高のAIを活かすようなデザインにするべきだと考え続けていた。
そして世間の猛突進型筋肉ゲームを尻目に、人間の頭脳と連係を問うようなCOOPを実現したのが、このChaos
Theoryの協力プレイモードなのだ。まずゲームは必ず2人チームで進行し、シングルプレイとは別に用意された広大な専用マップを協力して進んでいくことになる。マップには必ず2人一緒でなければ切り抜けられない仕掛けが存在し、例えば「片方がジャンプ台になって高所に上る」「巴投げで片方を反対側に放り投げる」「2人同時に爆弾を解除する」といったシングルプレイにはない特殊動作を駆使して進む必要がある。本編と違い、初代の特徴を引き継いでいるような協力アクションを必要とする地形パズルがかなり多い。
敵の数は多い割にプレイヤーは貧弱なので、潜入中もできる限り共に行動しなければならない。2人いる敵を同時にノックアウトする、片方が敵の背後に忍び寄っているときにもう片方が銃口を向けておく、片方が死んだら急いで蘇生させる(回数限定)という風に、2人のコンビネーションが鍵となる。電子機器を無効化するOCPは上手く弱体化されており、銃口を向けている間しか監視カメラなどを停止させることができない。片方がライトを消している間に道を駆け抜け、それが済んだら先に着いたほうがライトを消してもう片方を移動させる、というようなチームワークが必要になる。場面によっては別行動が有効となり、お互いの健闘を祈りながらそれぞれの役割を果たすという、まさに協力プレイの醍醐味を味わえることもある。これほど協力関係が重要なCOOPは他にない。
とにかく素晴らしい協力プレイモードだが、欠点は謎解きが難しく迷ってしまうことが多いこと。そして迷ってしまった場合でも片方が落ちるともう片方も強制的に落とされるため、迂闊に抜けられないことだろう。解き方を知らないミッションでは2時間くらい時間に余裕を持っておく必要がある。本格的な内容であるだけに、結構気構えがいるモードなのだ。あとラグの影響が大きくPing値が高いとゲームにならないこともある。
敷居がやや高いように見える協力プレイだが、その分内容は濃密だ。参加者は結構初心者の割合が大きく、下手クソでも別に参加して問題ない。最低限のチャットは必要だが、別にペラペラ喋る必要はない。単語だけの適当英語でもOKだ。まあCOOPは最高の内容なので、本作を購入したら迷わずオンラインに繋ぐこと。ちなみにパッチで新マップが2つ追加され、ボリュームはかなりある。

●総評
シングルに関しては無駄を省き自由度を拡大した純粋なステルスアクションゲームとして進化しており、ステルスゲームとして見た場合の自由度はそれほどでもないものの、よどみが少なくプロの仕事という印象を受ける。今まで欠点とされてきた部分を改善し、積極的に新要素を取り入れてゲームの質を向上させている姿勢には好感が持てる。シングル・マルチ共に非常に濃密な内容でプレイし甲斐があり、ボリューム面でも文句はない。ゲーム性は前作前々作から結構変わっているので、今までのSplinter
Cellシリーズが気に入らなかった人でも受け入れられるかもしれない。
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Splinter Cell: Chaos Theory Review Version 1.1
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