これは良い、まさにシンプルイズベスト
PCゲーム批評 「Serious Sam: The First Encounter」

Last Update:2007.01.28
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背景に映るシリアス・ボムがこのゲームの目印だ(まだFEでは出てこないが)。



【概要】

「Serious Sam」は最近の複雑化するアクションゲームを危惧したクロアチアのチーム、Croteamが世に送り出したFPSゲームである。「近年のゲームはすっかりストーリー重視で複雑になってしまい、DOOMのような撃ちまくれるFPSがなくなってしまった」と語るCroteamは、自らFPSを作ることを決意。元々一つのゲームとして発売するはずだったらしいのだが、デモ版で人気が出たので3部作に分けて出すことにしたらしい。作品はアーケードのシューティングゲームからも強く影響を受けており、それはゲームにスコアがついていることからも覗える。つまりシューティングゲームというものの原点に立ち返ろうとした作品でもあるのだ。

マルチプレイはデスマッチよりも協力プレイ(Cooperative)を強調しており、インターネットはもちろん画面分割を駆使して1台のPCで4人まで同時プレイ可能(ここもアーケードゲームに影響を受けている)。



【単純明快なゲーム内容】

このゲームを一言で表すとすれば、シンプルイズベスト、簡潔なものほど面白い、ということになるだろう。とにかくプレイヤーの操るキャラクターがいて、武器があって、敵がいて、それをひたすら倒していくという内容だ。とってつけたようなストーリーはあるのだが、ゲーム中に会話イベントといった煩わしいものはないので知らなくても全く問題ない。というかストーリーを知っている人間の方が少ないだろう。何故舞台がエジプトなのかとか、Mentalって何ナノとか、そんなのは考えるだけ無駄。結局エジプトというのも一種のコメディ、ノリ的なものでしかないので、言ってしまえば壁に映るテクスチャがエジプトの壁画っぽいに過ぎない。

しかし勘違いしてもらっては困るのだが「シンプルだから、作るのもやるのも簡単なのだ」というわけではない。むしろ全く逆である。シンプルであるからこそ、新要素やストーリーといったもので誤魔化しがきかないため、シューティングの骨格部分は恐ろしく洗練されていなければならないのだ。

まずどんなFPSを作るうえでも必ず重要になるのが「撃ったときの爽快感」であるが、この点に関してSerious Samは非常に良く作りこまれているといえる。例えば序盤の武器であるショットガンを見てみよう。この武器は撃った瞬間にショットガンらしい低音が鳴るのだが、それと同時に少々大げさすぎるくらい反動による腕の持ち上がりを描いて、テンポよく「カシャッ」というリロード音が入る。撃たれた敵は血を吹いて吹き飛ぶだろう。これにより、プレイヤーは「ショットガンという武器を撃った」ということをはっきり感じることができ、さらに血を吹いて倒れた敵を見て「この敵を倒した」と実感することができるのである。君たちは「そんなの当たり前だ」と思うかもしれないが、他の一般的なFPSと比べてみると、この一連のモーションや効果音が非常に良く出来ていることが分かるだろう。

武器に関しては半分くらいが元祖DOOMのオマージュであるように思える。特に似ているのはショットガンで、2種類あるショットガンは造形から撃ち方までDOOMそっくりだ。その他の武器もプラズマガンに似たレーザー兵器や連射しまくれるロケットランチャーなどが出現する。BFGタイプの武器(放つと範囲攻撃で雑魚を一掃できる最終兵器)には「キャノン」という独自の武器が登場し、外見・性能ともにオリジナリティが高く面白い作りになっている。余談だが続編ではDOOM名物のチェーンソーまで登場する。

効果音や射撃時の感触もかなりしっかり作りこまれている。DOOMにおいては敵の耐久力が低めで、広範囲を攻撃するダブルバレルショットガンを放つと一気に敵を倒すことができたが、そういった点もしっかり引き継いでおり大量の敵を一度に蹴散らす爽快感を味わえる。アイテムを手に入れた時の音も気持ちよく、弾薬を掻き集めるのが楽しい。ミニガンを連射すれば薬莢が辺りに激しく飛び散り、それらが実に緻密に描かれている。とにかくこの点に関しては文章や画像での解説に限界があるので、是非実際にプレイして体感してもらいたい。

小気味良い音と独特のテンポで繰り出されるショットガン攻撃。



【大量の敵を蹴散らす面白さ】

このゲームの面白さを支えるもう一つの要素は、大量の敵と、それを次々に倒していく爽快感である。Serious Samでは、とんでもなく大量の敵が一度に同時に出現する。難易度にもよるが、全15レベルのうちに合計5,000〜6,000匹もの敵が出現するのである。マップによっては数百匹の敵が絶え間なく襲ってきて、画面を埋め尽くしてしまうほどだ。これほどの数の敵が出てくるゲームは前代未聞である。何故これほど大量の敵がスムーズに描画できるかと言うと、それはCroteamがこのゲームのために開発した「Seriousエンジン」の特殊性によるものだ。Seriousエンジンはまさしくこの作品のために作られた、専用のエンジンなのである。

武器を放つ爽快感は、大量の敵を踏襲する爽快感との相乗効果により倍増される。敵が何十匹も固まっているところにロケットランチャーやキャノン砲を撃ち込むと、敵の肉片が幾重にも重なって吹き飛ぶのだ。これは爽快である。また敵が大量に出現することは、戦う気持ちを奮い立たせるのにも一役買っている。何百匹という大量の敵が360度の方向から襲い掛かってこようとすれば、嫌でもミニガンをぶちかまして叫びたくなるものだ。そしてSerious Samは、そんな我々の欲求の全てに応えてくれるだろう。眼前にいる敵をただ倒し続けているだけでここまで面白いゲームは、このSerious Samを置いて他にないと断言する。

「360度から迫ってくる敵」というのは、この作品の一つの大きなテーマとなっている。従来のFPSというのは基本的に屋内という非常に狭い空間に限定されていて、またそのことに特に違和感もなかった。外に出たとしても見えない壁があったり山があったりして、フィールドはある程度限られていたのだ。だがSerious Samにおいては、序盤以外は完全に屋外がメインの戦場となっている。しかもケチな壁などはなく、地平線が見えるくらい果てなく広々としているのだ(実際に地平線まで行くこともできるくらいである)。これもまたSeriousエンジンの特徴である。そして広い空間を作り出すことにより、壁などの障害物を気にせずに遠慮なく移動したり武器を使ったりできる開放感を演出しているのだ。これはかのスーパーマリオブラザーズにも見られた手法である。さらに先ほど書いたような「全方位から迫る敵」という演出をも可能にしているのだ。

よくSerious Samをバカゲーだとか、金のない会社が単純なものを作って敵を沢山出したからたまたま面白いものになったとか言う人がいるが、それは完全な誤りである。Serious Samの演出は一つ一つが恐ろしくよく考えられており、計算され尽くしている。パズルやストーリーといったものを廃した代わり、ゲームの全てを「破壊の爽快感」という一点へ注ぎ込んでいる。そのため「撃っているだけでとてつもなく面白いゲーム」へと昇華させることに成功したのだ。他の一般的なメーカーが似たようなゲームを作っても、ただの単調なB級アクションゲームしか出来なかったであろう。

このゲームのメインの敵「Kleer」が嵐のように押し寄せてくる。躊躇っていては生き延びられない。



【秀逸なゲームバランス】

このゲームで特徴的なのは、そのおかしなデザインの敵キャラクターだろう。一番有名なのは「Kamikaze」という名前の敵である。こいつは何故か人体の首から上を切り取られた姿をしており、両腕には爆弾がついている。そして常に「アアアアアアァァァァァァァァアアアァァァアァァァアァアーーーー!!!!」と絶叫しながらプレイヤーに突進し、名前の通り自爆するのだ。ただしちょっとの攻撃でその場で爆発してしまい、周囲の敵味方を巻き込んで死ぬ。単体では大したことはないのだが、これが全方位から一斉に襲い掛かってくるのだから恐怖だ。プレイヤーは必死に周囲にマシンガンを撒き散らしながら、こいつに近づかれる前に叩かなければならない。

敵キャラクターの作りこみに関しては、このゲームは十分に合格点を与えられると言っていいだろう。Kamikazeのようなユニークな敵がいるのはもちろんだが、それぞれのキャラクターがそれぞれの特徴を持っており、敵によって戦い方や使う武器などをしっかり変える必要がある。例えば先ほどのKamikazeは耐久力が低い代わりに大量に出現するので、マシンガンで叩くのが有効。さらに別の敵が近くにいるときに狙い撃ちすれば同士討ちさせることができる。メカノイドは耐久力が非常に高いのでロケットランチャーなどで攻撃する必要があるが、敵もロケットランチャーを放つので上手く誘導すればこれまた同士討ちさせることが可能である。他にも目で見て避けられない攻撃を仕掛けてくるサソリ相手には壁に隠れながら戦うといった風に、モンスターごとに戦い方は異なってくるのだ。

AIはわざと、かなり単純に作られている。これは大量のモンスターを一度に出現させるためである。もし凝ったAIなど使ったら、画面がカクカクしてしまうだろう。そうでなくとも撃ちまくりの爽快感を重視した内容なのだから、AIは単純でなくてはならない。ゲーム性とシステムのバランスを両立した好例である。

Serious Samは選択できる難易度が妙に尖っていることで有名だ。Easy以下は簡単過ぎ、Normal以上は難し過ぎるのである。だが続編でもこのスタイルを崩していない通り、これはわざとやっているのである。Normal以上で敵の性質を見切りながら生き延びることが面白いのだ。このゲームの本当の良さ、奥深さというのはここまで踏み込んで初めて分かる。単純にクリアしたいだけの人はEasy以下の簡単モードでクリアすればいいだろう。だが本当にこのゲームを理解するにはNormal以上で挑まなければならない。そうでなければクリアしたとは言わせない。批判も多いが、私はこの難易度調整から開発者たちの明確なコンセプトを読み取ることができ、とても嬉しかった。本当に自信のある開発者というのはユーザーに合わせて難易度調整するのではなく、「これがこのゲームの標準難易度だ!」と言えるような、そのゲームに合った難易度をNormalとするのである。難しいゲームならNormalが難しくていいのだ。

実際、Serious Samをプレイし続けているとそのバランスの良さには唸らされる。一見荒唐無稽に作られているように見えるのに、ちゃんと各場面を単独・最高難易度でもクリアできるように作りこんでいるのである。Hard, Serious, Mentalの3大難易度がそれぞれコンセプトが違うのも面白い。このゲームはプレイすればするほど鮮やかに、確実にクリアできるようになっていく。5周しても6周しても楽しさが尽きず、むしろやり込むほどの楽しくなっていくのだ。

名物「Kamikaze」。一度このゲームをプレイしたら、叫び声が耳から離れなくなっているはずだ。



【面白過ぎる協力プレイ】

このゲームはCooperativeに特化していることでも有名である。というか、むしろこっちがメインと言っても全く過言ではないほどだ。COOPではシングルプレイの全レベルを最大16人のプレイヤーが同時プレイできるのだが、現実には回線やバランスの問題で2-8人程度でやるのが一般的なようだ。ゲーム内容が単純なだけあって元々非常にCOOP向きのゲームであり、さらに大量の敵が次々に押し寄せてくるというのも多人数向きだ。さらにそれだけではなく、敵の硬さやプレイヤーの残機数も自由に調整できるのが素晴らしいと言える。

今までのCOOPで問題になりやすかったのが「人数が想定より増えると途端に簡単になってしまう」というアンバランスさだった。そのためCOOP向けの超上級難易度を用意しても、プレイヤー数が増えると簡単になってしまうという結果になってしまった。逆に難しくし過ぎると、人が集まるまではとんでもなく難易度が高くなってしまう。

だがSerious SamのCOOPでは「人数が増えるごとに敵の体力が○○%増える」という設定を自由にすることができ、適切な設定にすれば人が増えても敵が弱すぎるということにはならない。もちろんアイテムのStay設定(全てのアイテムを全員が入手できるかどうか)なども自由に変えられるので、ゲームバランスは自由自在。COOPをせずにこのゲームを語ることはできないだろう。

対戦ゲームではないので、人が少なくても十分濃いプレイを堪能できるし、デディケーテッド・サーバーでなくとも十分プレイに耐える内容である。自宅から気軽にワンクリックでサーバーを立て、対戦相手を募ることができる。またこのゲームならではの画面分割の協力プレイも可能だ。是非一度、誰かと協力して敵を蹴散らしてみてはどうだろうか。

プライバシー保護のため、名前は伏せさせていただきます。



【総評】

非常に面白く、歴史に残すべき作品。並み居る最新ゲームを押しのけてでもこの作品をプレイして間違いないと断言できる。ゲームバランス、デザインセンス、価格設定($19.99)など全てが素晴らしく、作品としても商品としても素晴らしい。シングルプレイだけでも十分過ぎるほど面白く、何度も遊べてしまうが、それでいてCOOPにも力が入っており、まさに至り尽くせりである。普遍的な面白さを持っているので、いつまで経っても色褪せることはないだろう。21世紀のはじめにこのような傑作が生まれたことは非常に喜ばしいことだ。


Demo版 日本公式サイト/4gamer.net/3D Gamers/Gamespot

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