Metro 2033 (メトロ 2033) 批評
評価:1本道ゲーが嫌いでなければ
Last Updated: 2010.05.23 / First Edition: 2010.05.04
Metro 2033 概要
元S.T.A.L.K.E.R. 開発者が携わったウクライナ産FPS。
実はこのゲーム、最初に発表があったのは2006年で
S.T.A.L.K.E.R. 1作目発売より前のことである。つまり開発が長引き過ぎたS.T.A.L.K.E.R.からドロップアウトしたメンバーが新たに会社(4A Games)を立ち上げて開発したゲームということになる。その後2009年にTHQがパブリッシャに決定してから急激に情報量が増えたのでいきなり発売されたかのように感じられるが、開発にはかなりの歳月が費やされているのである。
発売前に公開されていたメディアからもかなりS.T.A.K.E.R.に近い印象を受けていたが、実際にプレイしてみると雰囲気は似ているものの、ゲームプレイ内容は大きく異なっていた。Metro 2033はS.T.A.K.E.R.の二番煎じやコンセプトコピーではない、正当な弟だと言っていい。
単なる雰囲気ゲーで終わらない秀逸なシステム
Metro 2033のゲーム内容を簡単に説明すると、核戦争後の荒廃した世界の地下鉄で限られた物資を有効活用し、ミュータントや敵対勢力を相手にサバイバルをしていく、というもの。S.T.A.L.K.E.R.のようなオープンワールドで気ままに旅をしていくスタイルと違い、Metro
2033は決められたストーリーに沿って進行する一本道型のFPSとして作られている。
このゲームはリアル系FPSというほどではないのだが、武器やガジェットを使う上で色々と制約が多く、意図的に面倒に作られているのが特徴的である。

例えば暗闇を歩くときにフラッシュライトやナイトビジョンをつけっぱなしにしていると、すぐにバッテリーが切れてしまう。切れたらどうするのか?武器をしまって携帯式のリチャージャーを取り出し、ボタンを連打して充電しなければならない。
また地表に出る際には、放射線で汚染された空気を吸わないためにガスマスクを装着する必要がある。ガスマスクのフィルターは徐々に劣化していくので、マスクが壊れる前に周囲の死体がつけているマスクを拾って補充する必要がある。
これらのシステムは、聞く分には単に面倒なシステムに思えるが、実際にプレイしてみるとこれ以上ないほど世界観、ゲームプレイの両方にピタリと当てはまっている。普通のFPSにはないプレイヤーへの制限が、Metro
2033の終末的な世界観を演出すると同時に、ゲームに緊張感と変化を加えているのだ。
特にガスマスクの残量は1周目だと割とシビアで、プレイヤーに適度な焦燥と緊張感を与える、上手い分量配分になっていると感じる。あまりモタモタしているとHealthが満タンでもコロッと死んでしまう。そのため地上では常にタイムリミットを気にしなければならないし、敵と衝突した際も走って逃げることを考えなければならない。しかしこれは空気の汚染された場所だけの話で、普段は時間を気にする必要はなく、緩急が付けられていて鬱陶しい感じがしない。
ライトのバッテリー残量やエアライフルへのガス補充といった手間も然りで、単に撃ち合うだけのFPSにちょっとしたアクセントを加えている。Metro
2033は原作の世界観を上手くゲームと融合させた好例で、理想的な原作物の在り方と言える。
戦闘はS.T.A.L.K.E.R. そのまんま?

戦闘パートは対人戦とミュータント戦に分かれているが、この辺はまんまS.T.A.L.K.E.R.の室内戦っぽい。Metro 2033の主要な開発メンバーには、S.T.A.L.K.E.R.で使われているX-Ray
Engineの開発を担当した人物がいるとのことだが、グラフィックス周りだけでなくAIの作りもかなり似ているのではないだろうか。それはつまりMetro
2033のNPCの動きが非常に良く出来ており、対人戦がクソったれなほど面白いという意味だ。
AIの思考プロセスはしっかりとしており、索敵を嘘偽りなく行う。Far Cry 2やCrysisのように、自分が隠れて姿を眩ませたり、遠くで音を発生させればそこにプレイヤーがいると「勘違い」して行動する。Grenadeを投げればしっかり反応して遮蔽物に身を隠すし、銃撃戦の際も障害物を利用して賢く立ち回る。
ステルスと銃撃戦が混ざり合ったスタイルも受け継いでおり、限定的な場面ではあるが、暗闇に潜みながら完全ステルスで抜けるか、半ステルスで戦うか、ランボースタイルで戦闘するかの選択権がプレイヤーに与えられている。非戦闘時も巡回
-> 警戒 -> 不審な点を調べて配置に戻る、とステルスゲームのように立ち回るので手抜きはない。
ただし残念なことに、この賢いAIを活かすフィールドがS.T.A.L.K.E.R.のように与えられていない。S.T.A.L.K.E.R.では有り余るほどの広大な空間と沢山の障害物によってバトルフィールドが構築されていたので、そこでプレイヤーは好きなように作戦を立てて戦闘を楽しむことができた。
だがMetro 2033のバトルフィールドは屋内中心で、優秀なAIを活かすには窮屈な場所が多い。AIとの戦闘を存分に楽しめる立体的なフィールドもいくつかあるのだが、直線的な通路での強制戦闘になると正面突破しかなくなってしまう。場所によってはNPCの行動可能範囲がかなり限定されており、じっと同じ場所でキャンプしているだけのこともあり、このことが一部で「Metro
2033のAIはマヌケ」と呼ばれてしまう原因になっている。
またミュータントに突進馬鹿しかいないのも残念だった。特殊な攻撃条件を持つ敵もいるにはいるが、戦闘となると結局ウホウホ言いながら殴るだけかよ、みたいな感じだ。せっかく放射線塗れの世界で戦うのだから、もっとぶっ飛んだ攻撃方法の敵がいた方が面白かった。
戦闘バランスについてはかなり良好。特に弾薬が終盤までは常にギリギリなのが個人的に好ましい。弾薬が尽きたらナイフで戦う必要もあるが、このナイフの性能が高めでしっかり戦えるバランスも非常に好ましい。
スカスカなメトロ、足りない説明
一方で、期待を大きく下回っていたのが世界の作り込みだ。この世界、とにかくスカスカで見掛け倒しなのである。いや、確かにメトロに入ればそこは多くの人で溢れ、場所によってはすし詰め状態になっているので、外観は期待していた「最終戦争後に地下に閉じ篭って暮らす人々」が見事に再現されている。
だがその人々に話しかけることは(ストーリーに関係あるキャラと商人を除き)一切できない。彼らはNPCというより、衝突判定を持つ盛り上がった壁紙なのだ。プレイヤーが話しかけられるのは必要最低限のキャラクターのみで、酒場で一緒に酒を交わしてそのメトロの情報や、背後に隠されたストーリーを聞くことはできない。さらには世界観を補足するような書物や日記の類も一切出てこない。
これは非常に意味ありげな世界を背景にしたゲームとしては、かなりフランストレーションが溜まる…というか勿体無い作りだ。原作小説を読んでいないプレイヤーには細かい事情が一切分からないではないか。「詳しくは原作で!」とでも言うのだろうか?いくらなんでもゲームに遊びがなさすぎる。
説明が足りないと言えば、ゲームプレイ面でも本作は最近流行のHUDレスのスタイルをとっているが、攻撃を受けてHealthがかなり減った状態でも画面表示がさほど変化せず、残Healthが非常に掴みにくい作りになっているのがFPSとして痛い。自然回復しているのかどうかも分かりにくい。連続でダメージを受けていると「大丈夫だと思っていたのにいつの間にか昇天」ということがよく起こる。あとは武器の説明が出ないので、どの武器がどういう特性を持っているのかが分かりにくい(武器選択時にどれを持っていけばいいのか分からない)。
総評
いくつかの欠点を除けば、Metro 2033はかなりバランスの整っていて、それでいて一般的なFPSにはない魅力を持った、優れた作品であると言えるだろう。この作品を単体で見たときにケチをつける部分はさほどなく、それよりも数々の魅力的な要素に引きつけられる。
だがこの作品の抱えている問題は、ゲーム内容云々よりも、S.T.A.L.K.E.R.という出来の良すぎる兄貴を持ってしまったことにある。何しろS.T.A.L.K.E.R.はMetro 2033と同等以上に戦闘が面白かったし、RPG要素やサイドクエスト、NPCの語るストーリーなどもあって盛り沢山という印象がある。S.T.A.L.K.E.R.がもし存在しなければ、このゲームが1本道だからと言って批判されることはなかったはずだ。
つまりS.T.A.L.K.E.R.に酷似したグラフィックスや世界観を持って「正面対決」を挑んだMetro 2033にとって、S.T.A.L.K.E.R.を超えられなかったことこそが最大の課題として残ってしまったのである。
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