Last update:2006.12.02
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2006年のPCゲーム業界で、最もホットな話題の一つである「Half-Life2」の続編(ミッションパック?)が発売された。しかもただパッケージが発売されたのではなく、1ヶ月前に発売された「SiN Episodes」と同じエピソード形式での配信で…である。ストーリーは、HL2で絶体絶命のピンチに陥ったアリックスとゴードンが、いかに生き延び、要塞からの脱出を図るかが描かれる。よって前作HLでの追加ミッションのような番外編ではなく、本編のその後の話なのだ。
本編であるHL2は、他の作品とレベルの違うグラフィック技術、物理エンジン、それらを利用した新次元のアドベンチャーを実現していた。そこにPCゲームの新時代を垣間見た人も多いだろう。しかしFPS部分の練り込みがあまく、無駄に詰め込みすぎで、個人的な評価はイマイチだった。そしてその延長線上にあるEP1にもあまり期待はしていなかったのである。
だがEpisode Oneは良く出来ていたのだ。まずSiN:EPの項目でも説明したように、エピソード形式の作品は一つ一つが安価な代わりに非常に短い。このHL2:EP1もクリアにかかる時間は5時間半程度で、この方式は現状ではあまり好意的に受け入れられてはいない。しかし短い作品を短い周期で出すということは、必然的にそれらの作品はより洗練され、密度が高くならなければならないということだ。何故なら短い時間内にプレイヤーに満足感を与え、次回作を買いたくなるように仕向けなければならないからである。
そのためかHL2:EP1では、本編の見られた無駄に長いシーンが削られ、かなりスッキリした印象を受ける。ストーリーの都合もあるが序盤から「例の武器」が手に入り、大掛かりな仕掛けも出てくるため、非常にスピーディーな展開で開始直後からのめり込ませる。内容が偏り過ぎた章もなく、じっくり落ち着いてプレイすることができるだろう。短時間に次々と新しい展開が待ち受けており、とにかく飽きさせない。これはエピソード配信の意外な副産物ではないかと思う。
またつまらない乗り物シーンの削除は、大幅なローディング時間の短縮も可能にしている。徒歩のみならばマップを進むペースは遅いからだ。そのため今作でローディングを苦痛に感じたことはない。これによって前回のバギー面がいかに不要で冗長であったかが証明されたと思う。

開始地点が本編のラストであるだけに、序盤から迫力のある展開が続く。掴みとしては良いと思う。
EP1のテーマの一つは、HL2のヒロインである「アリックス」との共闘である。FPSとしては珍しく、ゲームの大部分はNPCと共に行動し、戦闘をしていくのだ。そしてこのアリックスのAIや移動パスの緻密さは特筆ものである。存在が邪魔になるようなことが全くといっていいほどなく、仮にルートを塞ぐようなことがあればどいてくれるし、戦闘になれば一緒に戦ってくれる。突っ込んで自殺したりすることももちろんなく、その時の状況によって移動するプレイヤーを追いながら戦ったり、フォローに回ってくれる。これをゲーム全体の半分以上に渡って作りこんでいるのだから大したものだ(ただ一度だけスタックしてしまったが)。もちろんアリックスが死んでしまえばゲームオーバーで、彼女しか開けない扉なども存在するため、一緒に行動することは必須である。
バランス的にはアリックスはかなり強めの設定になっており、攻撃を受けても簡単には死なないし、弾数無限のサブマシンガンで積極的に攻撃してくれる。そのため意識して守ってやる必要はなく、まさに共闘しているという感じで頼りになる。ただし頻繁にリロードが入り攻撃力はそこまで高くないため、プレイヤーもしっかり戦わなければならないバランスに仕上がっている。ストレスを溜めさせず、且つ幅広いプレイヤー層に合わせた秀逸な調整だと言えるだろう。
戦闘面についてはほぼ本編と同様。武器や敵キャラクターは同様のものが出てくるが、中にはコンバインがゾンビ化した「ゾンバイン」などもいて、手榴弾を持ったまま突っ込んできたりする。私が指摘していた欠点に「射撃音に迫力がない」というのがあったが、EP1では若干デフォルメされており爽快感は増している。今回の敵配分はゾンビの比重が大きくなっており、接近してきたゾンビをショットガンのヘッドショットで返り討ちにするのが面白い。ただ敵の被弾モーションがアッサリしていて物足りないのはそのままだ。
回復アイテムにはかなり余裕があり、Normalなら易しい部類に入るのも同様である。物質を吸い寄せたり吹き飛ばしたりするグラビディガンは最初から最後まで非常に重要な存在だが、EP1では前回のレーベンホルムほど戦闘に活用することは少なく、専ら謎解きアイテムとして活用することになる。もちろんその気になれば弾薬を消費せずにレンガを武器に使うことなどは可能だ。
今作にもHL伝統のトリックは数多く登場する。Valveならではのセンスで凝りに凝った仕掛けが用意され、プレイヤーは現実世界と同様の物理法則を利用して謎を解かなければならないのである。シーソーの原理を利用した仕掛けから、機械の敵を捕まえて味方にして戦わせたり、色々な展開があって面白い。戦闘中に謎解きをしなければならないときは戦闘をアリックスに任せて奔走することもあり、この辺の演出も見事だ。
グラフィックはソースエンジンにさらなる新技術を追加したものとなっている。Lost
Coastで見せたHDRはもちろん、常に行動を共にするアリックスは非常に多種多様な感情を表現できる。使い回しが多いのは当然だが、テクスチャの尋常でない描き込みといったValveクオリティは健在だ。強い光を見続けていると目が慣れるといった要素まであり、1年半前から劇的に進化したとは言えないものの、確かな向上が見て取れる。

終始共に行動し、頼りになるアリックス。ジョン・ロメロの思い描いた世界が今ここに。
それにしても銃が手に入るのが妙に遅い。本編もそうだったが、全体が短いEP1では特にそう感じる。前半はグラビディガン中心のパズル重視、後半は銃器を使った撃ち合い重視といった感じの内容だ。しかしもっとはやくじゅうをふりまわしてあそびたい、と思うのは私だけではないはずだ。これと銃で敵を撃ち殺すカタルシスの欠如もあり、やはり今作でもFPSの核となる部分の作りこみは今ひとつだといわざるを得ない。ラストでは連続戦闘も待ち受けているが、ここも大味な印象で撃ち合いを楽しむという内容ではない気がする。
アリックスの存在も悪く言えばお節介で、ゲームバランスを曖昧にしてしまっている。アリックスはNPCとしては強過ぎるから、プレイヤーが自分の力で敵を倒していくというよりは、強力な番犬をけし掛けながら適当に進んでいくという感じだ。このEP1は比重としては本編よりさらにアドベンチャー寄りになっており、正直FPS的な面白さを求めるのは無理があると思う。少なくとも銃を撃って敵を倒すことを期待している人がプレイすればガッカリだろう。
それと謎解きが凝っているのはいいが、必ずしもそれが面白いものになっているかというと疑問だ。序盤の光の球を使った謎解きは、周囲に浮かぶ光球を重力銃で掴んで動力源に入れ、エレベーターなどを起動させるものなのだが、別に謎を解いても大して面白くないというか。例えばHL2本編の謎解きが面白かったのは、リアルな物理エンジンとリアルな謎解きが組み合わさって、まるで現実世界の中を進んでいるような感覚を味あわせてくれたからだった。ところがこのEP1の序盤の謎解きは、物理エンジンはリアルなんだけど謎解きの内容が異次元でSFチック過ぎる。だから解いたときに、本編のような感動が感じられないのだ。
ゲームプレイが非常に短いにも関わらず、キャラクターやアイテム系がほぼ使いまわしなのは何とも味気ない話だ。これが以前のように、本編が発売された数ヵ月後に出たのならともかく、1年半以上経過しているのだから。ストーリー的には続きを描いているものの、あくまでミッションパックの域を出ない作品であるように感じた。

ほとんどの戦闘に、純粋な戦闘以外の要素が混ざるため、直感的な面白さというのには欠ける。
最初に書いたように内容そのものは本編の延長に過ぎない。本編を初めてプレイしたような新鮮な驚きというのはほとんどなく、ファンは物足りなさを覚えるかもしれない。しかしシナリオは洗練されて冗長な部分がなく、コンセプトにも一貫性があり、HL2を最初にプレイしたときのあのチグハグな感じがなくなっていてなかなか楽しめた。本編を楽しめた人はもちろん、途中で投げ出してしまった人もトライしてみる価値はあるのではないだろうか。同じEpisode形式のSiNに比べると、終わり方もこちらの方が面白いし、続きを買ってみたいという気になる。
気になったのは既に書いたとおりあまりにも謎解きに固執している点で、もはや謎解きのために謎が用意してあるという風に感じてしまう。HLはFPSという枠にとらわれず、新たなジャンルを創世しようとしている…と言えば聞こえはいいかもしれないが、それがゲームとしてどこまで成功しているかは少し疑問だ。元々謎解きとはアクションゲームのアクセントとして用意されているものだが、このEP1においてそれは完全に逆転してしまっている。私は初代HLのような謎解きとアクションのバランスを望んでいるのだが、Valveは今のままの姿勢で突き進んでいくつもりのようだ。
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