とにかくちぐはぐなゲーム
PCゲーム批評 「Half-Life 2」

Last update: 2007.09.24 / First Edition: 2006.05.xx
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●概要

”FPSの歴史を変えた作品”ことHalf-Lifeの続編。舞台は前作より十数年が経過し、地球は謎の勢力コンバインの支配下に置かれてい。主人公(Gordon Freeman)はCity 17と呼ばれる都市に解き放たれ、レジスタンスたちと協力して反乱を起こす。新たな"Source Engine"を使って美しいグラフィックの描画、リアルな物理現象の再現をする。ゲーム中には重力を制御するGravity Gunと呼ばれる武器が登場し、これによって周囲のオブジェクトを自在に掴み、吹き飛ばして敵にダメージを与えたり、遠距離にあるアイテムを取り寄せることができる。


●レベルデザイン品質の奇妙なばらつき

このゲームを純粋なFPS、3Dアクションゲームとして受け取ったとき、プレイヤーはかなりの違和感を覚えるだろう。Half-Life 2は一言で言っていびつなゲームである。まずゲーム全体の流れがおかしい。最初に逃走劇を繰り返し、銃を手に入れてこれからようやく本格的な戦闘が始まると思ったら、いきなり水上ボートやらバギーやらに何時間も乗せられて爆走させられる。他にも章ごとに「Gravity Gunを使って地雷を設置していく章」「ひたすら戦闘に明け暮れる章」など、チャプターごとにやるべきことがコロコロ変わり、寄せ集めのデモをプレイさせられているかのような錯覚を覚える。特にFPSなのに乗り物に乗り続ける場面は非常に退屈。

ゆがんでいるのは全体の流れだけではない。章ごとに面白い章、つまらない章がはっきり分かれており、これはつまり高品質なゲームと低品質なゲームが、同じ作品の中でごちゃまぜになっていることを意味する。

具体的な例を挙げてみよう。第6章「レーベンホルムには行かない…」は非常に秀逸なデザイン。Zombieが彷徨う夜の街で、意図的に弾薬量が抑えられており、弾がないのでGravity Gunを使って周囲のオブジェクトを武器として投げ飛ばし、敵を倒していかなければならない。Zombieを引っ掛けるためのブービートラップのアイディアも面白い。Gravity Gunのアイディアはここが一番活きている。9章と10章「ノバ・プロスペクト」「輸送網」もGravity Gunでタレットの攻撃を回避する工夫が必要でなかなかの面白さ。ラストの展開もスピーディーで良い。

逆に11章と12章「敵性市民 1」「フリーマンに続け!」は、兵器による爆撃やスナイパーの狙撃によって一方的に攻撃される場面が多く、ストレスが溜まるつまらないデザイン。さらにここはデザイナーの未熟さがありありと伝わってくる場面で、プレイヤーをゴールまで誘導するのが下手で、どこに行けばいいのか迷うことがある。乗り物を運転する4章と7章は前述の通り退屈。

プレイを終えた直後から何故ここまで品質にバラつきがあるのか疑問に思っていたが「HL2はレベルごとにデザインするチームが分かれており、完成させてからそれらを繋ぎ合わせた」という話を聞いて納得した。つまらない部分をプレイさせられて萎えると、面白い部分までつまらなく感じてしまう。


●非常に美麗で軽いグラフィック

テクスチャは詳細な部分まで描かれており、センスが良く見惚れてしまうほど美しい。単に美しいだけではなく、キャラクタの顔はまるで人間のように筋肉を歪ませ、かなりリアリティがある。ゲーム開始時に現れるG-MANが、どアップで表情をグリグリ変化させる様子など感動ものだ。発売から既に3年が経過した今でも通用するクオリティだろう。水面の反射も美しく、見晴らしの良い場所に立つと、遠くに見える灯台にも手が届きそう…なだけで、実際にはその場所へ行くことはできない。実際に手の届く場所まで接近することができたFarcryに比べると、広大そうに見えて一本道なマップはちょっと肩透かしな感じだ。

D3 Engineとはまた違った味わいの、さらりと透き通った質感のSource Engineだが、明らかに優れた点として”軽さ”がある。設定さえ上げ過ぎなければ1.7GHz、オンボードビデオチップのノートPCでもそこそこ動かせてしまう。これはクオリティを考えると驚異的な軽さ。


●物足りない戦闘部分

銃撃音はかなり乾いた感じの迫力のない、重量感の感じられない玩具のような音であり、敵に当たってもリアクションが少ないので撃っている気がしない。敵は種類が少なく、前作の特徴的なエイリアンはほとんどが姿を消し、単細胞エイリアンと人間型の敵くらいしか出現しない。しかも難易度調整のためなのか、人型の敵が前作より雑魚になっている。あの嫌らしいGrenadeによる攻撃とアグレッシブな攻撃姿勢が消え、無難に守備範囲内で障害物に隠れながら戦う程度である。純粋に銃撃戦部分だけを抜き出せば並以下の出来と言ってよい。


●入り込めないストーリー

会う人会う人がみな自分のことを英雄だ、英雄だと気持ち悪いくらい囃し立てるが、前作はひたすら研究所で孤独にサバイバルしていただけなので、全く実感が沸かない。この違和感がゲーム中ずっと続く。何だか自分はゲーム世界の偉大な人物に乗り移っただけの平凡な人物という第三者的視点に立ってしまい興醒めな感じだ。主要人物もよく分からないSF理論をベラベラ話したり、プレイヤーの記憶に全くない過去の事象を振り返ったりするので、ますます距離感を感じる。前作の、会うやつらは全員他人、仲間を利用するも殺すも自分次第という設定のほうが、よほど世界に没入できたと思う。

モニターの中を別世界と感じてしまう理由にはローディング時間の長さもある。道を歩いていると何の変哲もない場所で突然ローディングが始まり、20-30秒くらい待たされてしまう。これが1つのレベルに何箇所も存在する。特に乗り物に乗っているときは、高速移動しているだけにかなり頻繁に読み込みが挿入されて白ける。


●ゲーム以外のことで

Steamというプログラムを常駐させておかないとプレイすることができない。これは海賊版対策で仕方がないとしても、やたらでかいパッケージを買ったのにマニュアルが紙切れ一枚でオンラインマニュアルもなし、CD6枚で認証も必要なので、ゲームを開始するまで余計に手間がかかるなど、Valveのユーザー軽視とも言える姿勢には憤りを隠せない(余談だがこの会社、最近はさらに暴走気味)。

他にも視野角がデフォルトで狭くて酔いやすい。さらに乗り物の動きが激しくて酔うユーザーがいる、ということをテストの段階で認識していながら、あの退屈なレベルを残していたのは疑問。


●総評

継ぎ接ぎだらけの技術Demoという印象。Gravity Gunで物体を制御する面白さ、Source Engineによるリアリティ溢れる世界構築などは確かに素晴らしいと思うが、ゲームとしてまとまりに欠け、全体のバランスが悪い。Half-Life 2はゲームとして見た場合、欠点が多いが、発売直後に感じるインパクト、話題性だけで突っ走ってしまった印象がある。レーベンホルムのようなデザインを中心に、Source Engineのデモンストレーションではなく、もっとゲームとしての面白さを重要視していれば良い作品になれたかと思うだけに勿体無い。


Demo版 4Gamer.net/3D Gamers/Gamespot
*:Demoは2つある、Steam必須

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