Last update:2007.07.03
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*:画像はSteam及びBlue Shiftから導入可能なHigh Difinition Packを適用した状態でキャプチャーしている

●Half-Lifeが変えたもの
ここで語り直すのもかなり今更感のある有名作品だが、文献も少なくなってきたので改めて書き直すことにする。Half-Lifeは1998年の末に発売されたFirtst Person Shooterで、Gordon Freemanという1人の科学者が、自分の所属する研究所での事故が原因でワープしてきたエイリアン、及びその事故を隠滅するために送られてきた軍隊と戦い、生き延びるまでを描くサバイバルホラーである。プロットの原案は、ストーリーを担当したMarc Laidlawが以前手掛けた「Gadget: The Third Force」からきており、独自のSF設定や謎の男G-Manの暗躍など、プレイヤーにほとんど全容を見せない不鮮明な展開が続いていく。
Half-Lifeのデザイン上での大きな特徴は、1人称視点で延々と戦いに明け暮れるのが主流だったFPSに、アドベンチャーゲームの要素を本格的に導入・融合させ、独自の演出を利用して一種の新しいジャンルを切り開いた点にある。それまで単に戦いの口実を作るためのものだったストーリーには、本格的なSF小説さながらの深みのあるものを用意し、プレイヤーに先に進めさせるための期待感を煽った。
FPSに高いストーリー性を加えるという点では、1994年のSystem Shockなどが既に実現していたのだが、Half-Lifeのもう一つの凄さはストーリーを体感させる手法にある。ゲームというのは例え1人称視点であったとしても、結局主人公というのはプレイヤーにとって第三者的な存在としか感じられないものである。しかし本作の主人公であるGordon
Freemanは、一切自己主張のしない男として描かれており、過去も語られなければ、喋ることも無い。ではFreemanとは一体何者なのか?それは我々プレイヤー、一人一人である。Half-Lifeは主人公に具体的な人格を持たせないことで、プレイヤー自身の人格を主人公に投影させるようにしているのだ。
ゲームは終始一貫してFreemanを第三者的に描かないように作られており、プレイヤーにもあらゆる制限が設けられない。不用と判断したなら、仲間を殴り殺して弾薬を奪うのも自由なのである。Half-Lifeの世界には温厚なFreeman、残忍なFreemanと、無数のFreemanが存在し得る。プレイヤーは椅子に座ってキーボードを叩いているのではなく、モニターの中に存在するのだ。
物語の見せ方自体も明らかに変化している。それまでストーリーというのは、ゲーム側から一方的に提示されるものだった。しかしHalf-Lifeにおいては、プレイヤーが実際に世界を探索し読み取るものに変化している。例えば最初に研究所を案内されるときでも、モノレールの中から様々な人々を自由に観察でき、この世界についての情報を自主的に掻き集めることができるし、廊下を歩き回っていると窓の向こうで怪しげな密談をしている男たちを発見することもある。このようなインタラクティブなストーリ演出はゲームというメディアならではの手段であり、映画的な、などという表現はもはや全く陳腐な響きしか残さなくなってしまった。

●論理的な謎解き
凝ったストーリーと密接に絡むのが、論理的なパズルである。従来のアクションゲームにおけるパズルとは「Aのスイッチを押したからBの扉が開く。Cの鍵を持っているからDの扉が開く」というように、ストーリーとは全く無縁の鍵探しか、脈絡のない謎かけが主流であった。そのため頭を働かせる場面は少なく、謎解きというよりアイテム探しがほとんどだった。ところがHalf-Lifeでは、謎がストーリーに沿って用意されている。
例えばある床に電流を含む液体がこぼれているのは、事故の余波で爆発が起き、液体がこぼれ出してそこに切れた電線が接触したからなのだ。そしてそれを解決する方法も、近くにあるブレーカーを落として電気の流れを止めたり、足場になる箱を運んできてジャンプで飛び越えたりと、これまた論理的に作られている。Half-Life
2のメインファクターである物理エンジンの利用による謎解きも、実は初代から既に組み込まれており、浮力の法則を利用して先に進む場面などがある。
要するに、ゲーム内で起きていることでも整合性を欠くことのないように徹底して作りこむことにより、プレイヤーに作り物の世界だと感じさせないようにしているのである。また現実的なパズルの作り方は、プレイヤーに状況を推理させて解かせる、というインテリジェンスな楽しみも生み出す。この感覚は質の高い海外ADV作品の楽しさに似ている。
●限界状態を演出するレベルデザイン
Half-Lifeの革新的な部分は、ストーリーの体感のさせ方にある。ではアクションゲームの核となる部分はおざなりなのかというと、実はこれが全くそんなことはない。この点がこの作品を、他の作品とは一線を画す存在にしている。
ゲームバランスはストーリーに忠実に練られており、即ちたった一人の平凡な科学者が軍やエイリアンから生き延びるという絶望的な状況通り、体力や弾薬は常に厳しいものとなる。このバランスの取り方が非常に上手い。初プレイの人間が常に死にそうになりながらも、何とか切り抜けられるように調整されている。恐らくマウスが磨り減って消滅してしまうくらいテストプレイを重ねたのだろう。特に中盤の難所となる"Surface
Tension"のバランスは、あらゆるゲームのレベルの中でも白眉の完成度であると言える。
NPCもモンスターだけでなく、賢いAIが敵味方共に登場するのがとても面白い。こういう軍の陰謀的なストーリーでは、一般市民同士の協力という展開が欠かせないわけだが、本作でも途中で出合う警備員や研究者たちを同行させることができる。味方AIの動きは非常に良好で、壁に体当たりを続けてスタックしたりすることがなく、プレイヤーが尻拭いをしてやらなくともちゃんと自立して行動できる。敵AIはもっと優秀で、海兵隊員同士が連係を取りながら攻撃し、毎回攻撃パターンを変化させてくるという、時代的には考えられないほど驚異的な頭脳プレイを見せる。

●MODの広がり
Half-Life本編のクオリティには直接関係ないのだが、この作品が予想を遥かに越える売り上げを記録した背景には、膨大な数のMODの存在がある。有名作品だけでもCounter-Strike,
Team Fortress Classic, Sven Coop, They Hungerといったものがあり、これらはMOD目当てだけでも本作を購入する価値のある作品に仕上がっている。なお最近ではMOD関連のサポートは全てSteamに移行したのだが、一部のMODはHalf-Lifeを買うだけでは遊べないらしい。これはValveの商売上の理由がほとんどなのだろうが、こういう自分から作品の可能性を狭めてしまうような真似は感心しない。
●総評
Half-Lifeは傑作であると言える。このゲームがFPSのデザイン論を大きく変えたことは確かで、その後発売されたFPSのほとんどが影響を受けていると言っても過言ではない。ただ憂うべきことは、Half-LifeやSystem
Shock 2といった作品を頂点に、この手のストーリー演出の手法が一向に進化していないことである。というかむしろ退化しているのではないかとすら思う。今の開発者たちには今一度Half-Lifeを体験し直してもらい、ストーリーのインタラクティブ性について考えてみてもらいたい。
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