Last Update: 2007.12.28 / First Edition: 2007.12.26
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●金かかり過ぎ
Crysisは、Far Cryを開発したドイツのCrytekによって作られた作品である。権利の問題で名称が変更されているが、開発が同じなので正統な後継作品と見てよい。ストーリーは、未知の物体を独占して調査しようと島を封鎖した北朝鮮軍に対し、米軍がNano
Suitと呼ばれる特殊装備をさせた部隊を極秘に派遣し、広大な島の中での戦闘が行われる…と米国映画的なノリだ。そんなわけで今回もFar
Cry同様、ジャングルの中を進み圧倒的多数の敵と戦っていくことになる。違うのは主人公がハイテクスーツを装備しているという点くらいである。
当然のようにグラフィックが最大の話題となっているゲームなので、その点から触れてみる。プレイを始めてまず驚くのはキャラクターモデルだ。今まで新世代のグラフィックエンジンが出るたびに「実写のようだ」「リアルだ」という褒め言葉が飛び出してきたが、Crysisのキャラモデルやアニメーションは視力の悪い人間が裸眼で見たら本当に実写と区別がつかないというレベル。人体の皮膚に存在する細かなシミやシワまで緻密に描かれ、それらを表情筋によって制御し精密に動かしている様子には感動すら覚える。屋外の描写も非常に写実的で、モニターの中にどこまでも広大なCrysisの世界を、寸分の妥協もなく描き出してくれる。
グラフィック信仰者の人たちにとって、Crysisは疑う余地もなく「買い」だろう。というか彼らはこんなところで説明するまでもなく、開発段階のスクリーンショットを見たときから鼻息を荒くして発売日を指折り数えていたに違いない。リアルなゲーム体験とは優れた映像表現により可能になる、と考える者たちにとって、このCrysisは絶対的な金字塔となり、今日まで発売されてきたあらゆるゲームを「絵の汚いゴミのような何か」というカテゴリーへと追放してしまうだろう。グラフィックの美しさに伴って動作の重さも半端ではないので、ベンチマーカーの人たちも絶対に買いだ。
ストーリー展開は、これまでの「映画的なゲーム」とは全く違った意味で映画的である。メタルギアとかがポリゴンキャラを必死に動かしてやたら説教臭く語り映画っぽく見せていたのに対し、Crysisはゲームキャラクターを俳優に見立て実際に演技をさせているよう迫真さを感じる。またサウンドや台詞回しは超格好良く、リアルなグラフィックと抜群の臨場感によりハリウッド映画の世界に飛び込んだかのような興奮を味わえることは間違いない。ゲーム性云々といったオタ的な考察をすっ飛ばせば、Crysisは大衆娯楽としてずば抜けたものを持っている。

●CloakはFar Cryを破壊する
ゲームの基本ルールはFar Cryとほぼ同じである。プレイヤーは広大なジャングルに放り込まれてから「途中どのようなルートを辿ってもいいからここに辿り着け」と指示される。ルートには陸路や海があり、その途中にあるハンビーやボートといった乗り物を利用しても、徒歩でジリジリ進んでも構わない。待ち構えている敵を無視して隠れながら進むのも、全滅させて武器を奪うのも自由。
Crysisではこれに、Nano Suitによる特殊能力の発動という要素が加わる。備えられている機能は
Strength: 筋力を強化して大ジャンプ、重い物を強く投げつける、射撃時の反動の軽減
Speed: 足を速くして猛スピードでダッシュ、そこからダッシュジャンプ
Cloak: 透明化して敵に気づかれない
Armor: 受けるダメージをエネルギーのある限り吸収する
の4つ。これらの機能は特に難しく考える必要はなく、直球の使い方で問題ない。例えば戦闘中はArmorにして攻撃を防ぎ、崖の上にStrengthのジャンプで登り、危ない場面はSpeedで突っ切るといった具合。この3つはエネルギーの消費と能力の強さが大体釣り合っており、バランス的に問題ない。
問題があるのはCloakで、この能力は群を抜いて便利過ぎ、その強力さ故にゲームフィーチャーそのものを破壊してしまっていると言ってよい。まずプレイヤーはCloakを起動させることにより、至近距離まで近寄られた場合を除き、いかなる時でも完全に姿を消すことができてしまう。よって敵に見つかったときや偵察するときなど、何かあったら常にCloakを起動させるのが安定になる。また透明化とは一見防御に使う能力に思えるが、実際にはCloak状態で背後から接近し、頭を撃ち抜いた瞬間にすぐCloak再起動で隠れ、次の獲物を狙うなど、攻撃時にも無類の力を発揮する。そしてAIは学習などせず、プレイヤーがCloakで隠れると毎回オロオロするため、敵はCloakに対抗する手段が「全くない」。Cloakはステルス時にも最強の能力となり、Cloakで移動>茂みに隠れてエネルギー回復>Cloakで移動…、と繰り返すだけで敵に全く見つかることがなくなり、そのレベルに存在するほぼ全ての敵を完全スルーして無血クリアというのも楽勝で出来てしまう。
要するにCloakというのはそのあまりの万能さ故に、戦闘の緊張感、銃撃戦の際の戦術、ジャングルに潜むことによるステルス、といったFar
Cryで核となっていた要素をスポイルしてしまっており、それら全てへの回答を「Cloakを使う」で済ませてしまっている。CrysisにはFar
Cryのように茂みに隠れて進む、双眼鏡で偵察するといった慎重さは必要なく、突っ込んで敵に見つかりそうだったら適当にCloakを使えばクリアできてしまう。
ゲームを始めた当初は、これだけ強力な能力はすぐに見破ってくる敵が出現するだろうと考えたのだが、驚いたことにCloakは最初から最後まで万能で、全ての敵はCloakという神の能力の前にひれ伏し、成す術もなく虐殺されていく。CrysisはCloakという一つの能力のために、Farcryとは全く別物のゲームへと変貌してしまっている。開発者の方針としては、難しく考えなくとも即興的に楽しめるスーパーマン的なゲームにしたかったのかもしれないが、結果として選択の発生しない単調なゲームになってしまった。
CrysisのゲームプレイにおいてのCloakとはまさにチートと同義で、これを封印するだけで俄然面白くなる。物足りないと感じる人にはCloakの禁止プレイを強く推奨する。

●自由度は高いが調整不足
ゲームは全体的に、時間不足で未完成のまま見切り発車してしまったという感じで溢れている。各レベルの完成度は70%といったところだ。Crysisは確かにマップが広大で、様々なルートから攻めることができるのだが、自由度が高いだけでそれを制御できていないと感じる部分が多々ある。
例えば最初のレベルでは陸路を敵が封鎖し見張っているので海を泳いでみたのだが、見事に何の障害もなく陸路の敵を完全スルーして目的地へ辿り着いてしまった。この場合クリアを目指す上では海を泳ぐのが最善で、愚直に道を歩いて敵と交戦するのは骨折り損にしかならない。つまりどのようなルートを通っていくのが最善か、というのを考える必要がほとんどなく、マップの広さは色々な場所を移動できるというだけでゲーム的な面白さにはあまり結びついていない。
これは明らかに練り込み不足だ。普通はこのルートではこういった困難があるが、別のルートではこんな困難がある…とプレイヤーを悩ませるだろう。大体、単に「自由度」とやらが高いゲームを作ろうとしたら、やたらにマップを広げてしまえばいいのだ。難しいのは自由な中にも秩序やバランスを見出すことであり、それがデザインというものだ。
前半だけでも文句を言いたい部分は多いが、後半はもっと悪くなる。ストーリーが急展開して敵が空飛ぶエイリアンだけになり、道は完全に一本道で狭く、このゲームを滅茶苦茶に動作が重いだけのB級FPSに変えてしまう。ゲーム性の変化以外にも大きいのが、ただでさえ重いグラフィック処理が5割増しくらいに重くなってしまうことで、余裕のある設定にしている場合を除き、前半と後半ではグラフィック設定を変更しないと快適なプレイが困難(前半に20-30fps出ていても最後は10-15fpsくらいしか出ない)。重さに一貫性がないのはゲーム以前に商品として問題があると感じる。
巷ではこのCrysisを、PCゲームのグラフィック水準を一気に押し上げる作品、と評価する向きもあるが、私はその意見に賛同しない。同じ内容ならグラフィックが綺麗な方が楽しいのは当たり前だが、グラフィックの向上には開発費の上昇、個人レベルでの作品作りが困難になる、作り手とユーザー共に負担が増えるなどネガティブな面も非常に大きい。ゲーム性が大して進歩しないのにグラフィックだけ極端に進化している現状には危機感すら覚える。GPUメーカーに踊らされているだけではないのか。

●総評
予定より文句の方が多くなってしまったが、最初に書いたとおり深く考えずにプレイすればゴージャスな作りの大作FPSとして純粋に楽しめる内容であると思う。実際、Cloak使いまくりでスーパーマン的に敵をなぎ倒していくのもそれなりに面白く、一般的なFPSと比較すれば水準は十分に越えている。ただ前作が偉大だったために、そのゲーム性に感動した者にとってはどうしても「作り込みの甘い劣化版
Far Cry」に見えてしまう。
Demo版 4gamer.net/File Front/Gamers Hell/3D Gamers
Crysisを購入 Amazon/Play-Asia(限定版)/GDEX(限定版)
ゲーム用PCを購入 (ハイエンドゲームPCブランド「G-Tune」)
●動作環境 (XP版とVista版)
| 必要動作環境 | 推奨動作環境 | |
| OS | Windows XP | - |
| CPU | Pentium4 2.8GHz | Core 2 Duo 2.2GHz, Athlon 64X2 4400+ |
| RAM | 1 GB | 2 GB |
| VRAM | 256 MB | GeForce 8800GTS 640MBと同等 |
| HDD | 12 GB | - |
| 必要動作環境 | 推奨動作環境 | |
| OS | Windows Vista | - |
| CPU | Pentium4 3.2GHz | Core 2 Duo 2.2GHz, Athlon 64X2 4400+ |
| RAM | 1.5 GB | 2 GB |
| VRAM | 256 MB | GeForce 8800GTS 640MBと同等 |
| HDD | 12 GB | - |
2007年で最も重いゲームであることは間違いなく、それなりにグラフィックを綺麗にしようと思ったら推奨動作環境は必要になる。ただ設定項目は多彩でLow
- Very Highの4段階で調整できるため、スペックの低いPCでも設定さえ落とせばプレイはちゃんとできる。ビデオカードにはShader
Model 2.0の他にもかなり高速な処理を要求するので、ゲーム用途でないノートPCなどでの動作は不可と考えたほうがいい。
2007年の時点では個人の使うPCでは最高設定で快適に動作させることは不可能で、GeForce
8800GTXでも全てをVery Highにするとfpsが落ち込み、SLIもさほど効果がないらしい。CPUはL2キャッシュが十分にあるデュアルコアCPUを使っていれば、それ以上のものにしてもさほどパフォーマンスは上がらず、後はGPUが重要となるようだ。
私の環境はAthlon 64X2 5600+, RAM 2GB, GeForce 7800GTX 256MBだがHigh設定に一部Mediumを混ぜて中盤まで20-30fps程度。
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