『StarCraft 2』の最初の1年間
進化の道程と今後の発展
Last Updated: 2011.08.12 / First Edition: 2011.08.12
要約: 大ヒットを記録したStarCraft 2だが、そこには大作に付きまとうコスト面の問題や、古典的ストラテジーゲームの限界も見え隠れしていた。調整と改善の連続だった本作の1年を振り返りつつ、今後を占いたい。
StarCraft 2の現状
『StarCraft 2』 が実際に発売される前は、私の中でこの作品は「出そうで永遠に出ない続編」のカテゴリに含まれていた。何しろ正式発表までの10年間、噂だけ存在してずっと作品の姿を拝むことができなかったのだ。
しかし発表された後は早かった。「Blizzardのことだから、発売はきっと2020年くらい」なんてジョークは軽く吹き飛ばして、2010年7月27日にSC2は本当に発売された。発売されてからというもの、私ははSC2ばかりプレイしていて、しばらくこのサイトの更新が止まってしまったくらいだ(実際には攻略記事を作るのに忙しかったのだが)。
発売後のSC2は「もっとも速いペースで売れたストラテジーゲーム」の栄誉を手にし、半年程度で450万本近くを売り上げるなど、Blizzardゲームの名に恥じない驚異的な実績を残した。だが開発/宣伝コストも相当なもののようで、
収益面ではまだ厳しい状況 のようだ。自社で運営しているBattle.netの維持費もかなりの負担だと予想される。先ほどの450万本という数値も「当初の予想と比べれば少ない」という声があった。もっとも韓国やロシアでは課金モデルも用意されているため、単純に販売本数で考えることもできないのだが。
SC2の不安要素はこれだけではない。基本無料のDotAクローンとして圧倒的な人口を誇る『League of Legends』など、近年流行のF2Pモデル作品が脅威として存在するし、開発者自身が王道的なストラテジータイトルの限界についても吐露している。
『Diablo 2』 『WarCraft 3』 の時代と比べると、磐石とは言えない状況だろう。
ただ一方で拡張パック『Heart of the Swarm』『Legacy of the Void』の発売も控えており、5年後10年後まで売れ続けることを考えれば、まだまだこれから利益を生み出すタイトルとも言える。eSportsタイトルとしても欧米や韓国のプロプレイヤーが本腰を入れて取り組んでおり、盛り上がりを見せている。Blizzardのゲームに対して、1年程度の期間で結論を求めるのは早計というものだろう。
SC2の1年―ベータ時代
2010年1月28日:
ベータテスト開始は近いか?
2010年2月18日:
ベータテストがついに開始
2010年4月19日:
韓国の審査で”Adults-Only”に
2010年5月4日:
発売日が7月27日に決定
製品版発売の5ヶ月以上前から開始されたベータテストでは、何度も大幅なバランス調整が行われた。当初は完全なクローズドベータだったが、
途中から海外のゲームショップで予約したプレイヤーも参加可能になり、 発売前の時点で既にかなり差がついていたように思う。
一方、SC大国である韓国の審査では、SC2が"Adults-Only"として評価されたことが大きな話題となる。不安要素を抱えながらも発売は7月27日に最終決定され、欧米ではSC2のCMが放映された(いつか日本のTVでこういうのが流れて欲しいものだ)。
SC2のCM
VIDEO
v1.0時代 2010年7月28日:
製品版が本日解禁
2010年8月5日:
発売後48時間で販売数150万本超える 2010年8月5日:
Blizzardによるユーザー製コンテンツの削除基準
2010年9月2日:
発売から1ヶ月間で300万本を突破
v1.0時代の最大の問題点――それは
Zergが弱い ことだった。ベータテストで調整を重ねただけあって、その差は致命的なものではなかったものの、上位の種族使用率などを見てもバランス調整が必要なことは明らかであった。
一方v1.0で猛威を振るっていたのはTerran。現在より多くのユニットが高い能力を持ち、特にTvZの対戦ではReaperによるハラスが極悪とも言える強さを発揮。開始10分以内に終了してしまうゲームも珍しくなく、Zerg使いは完全にReaperラッシュを前提にオーダーを組む必要があったほどである。Siege
Tankの対Lightユニットへの強さもかなりのものだった(現在は一撃のダメージが50 -> 35になっている)。
今になって振り返ってみると、やはりこの頃のTerranは最強性能であったと思う。あらゆる点で死角が存在しなかった。
v1.1時代
2010年9月22日:
最新版となるv1.1.0がリリース
2010年10月3日:
5,000人を超える不正プレイヤーへ処罰下る
2010年10月12日:
シングルプレイのチーターもBANされる 2010年10月18日:
最新版となるv1.1.2がリリース
2010年11月3日:
無料でのCharacter名変更権が与えられる
2010年12月22日:
デモ版がリリース
初のバランス調整パッチとなるv1.1は、発売から2ヶ月後にリリースされた。問題が明らかになっていたにも関わらず対応は遅めだったと言える。Zealot/Reaper/Battlecruiserラッシュの弱体化や、Siege
Tankのベースダメージが大幅減になるなど、このパッチで
Terranは明らかな弱体化 を受ける。
しかしまだこれは最初のパンチに過ぎず、次の月にBlizzardはv1.1.2パッチをリリース。これはマイナーアップデートではなく、バランス的にはv1.1以上の大幅な調整を含んでおり、Zergが明らかに強化され、Terranはさらに弱体化。また3本レーザーになると手がつけられなかったVoid
Rayも大分大人しくなる(それでも十分な破壊力は残ったが)。
チーターへの処罰も徹底された。5,000人を超える不正プレイヤーがBANされた他、Blizzardは「たとえシングルプレイであっても不正は許さない」という態度を示したのだ。これは常時Battle.netへの接続を要求するSC2ならではの措置と言えた。
v1.2時代
2011年1月12日:
1.2.0 パッチがリリース
2011年1月21日:
「World of StarCraft」騒動の経過
2011年2月10日:
累計販売本数が約450万本に到達
2011年2月12日:
World of StarCraftのタイトルが”StarCraft Universe”に変更
BlizzardによるSC2の改善は続く。v1.1がバランス調整のためのステージだったすれば、v1.2はeSportsのためのステージだった。ここでようやく
チャットチャンネル などの当たり前の機能が追加され、リプレイ機能やUIの改善、Masterリーグの追加などが行われる。
ゲーム本体以外では『World of StarCraft』騒動が議論を呼んだ。ニュースサイトでも取り上げられたMMORPG Modの公式トレイラーが、
Activision BlizzardによってYouTubeから削除 されてしまったのだ。一番の問題は名称にあったようで、結局Modの作者とBlizzardが話しあった後、名前を『StarCraft Universe』に変更することで合意している。
ゲームのModに対して、そのゲームの開発元が何らかのネガティブなアクションを起こすのは異例と言えるが、この件で「BlizzardはWorld
of StarCraftの開発を進めている」という噂は一層真実味をおびるようになった。
v1.3時代 (現在) 2011年3月24日:
最新版 v1.3.0がリリース (更新)
2011年3月30日:
Season 2開始
2011年5月12日:
v1.3.3 リリース、バランス調整とバグ修正
2011年6月1日:
Heart of the Swarm: 公式トレイラー2本を正式公開
2011年6月1日:
Heart of the Swarm: HotSプレビュー、ゲーム内容が大分明らかに
2011年7月28日:
発売から1年が経過した『StarCraft 2』でリージョンリンキング開始、近隣のサーバ同士でプレイヤープールを共有
2011年8月4日:
『StarCraft 2』のデモ版を“Starter Edition”に差し替え、製品版のプレイヤーとも交流でき、リプレイまで再生可能
バランスはv1.3とv1.3.3で二度大きく調整されることとなる。これまでの調整と比較すると、High TemplarやInfestor、Ghostといった
マイクロ依存の高級Unitへの調整が中心 となっており、特に上級レベルでの対戦に大きな影響を与えた。中でもHigh TemplarのAmuletアップグレードが消失した影響は大きい。v1.3.3ではさらに4GWも弱体化されるなど、Protossプレイヤーは戦略の変化を余儀なくされた。
ラダーは3月の終わりにシーズン2へと突入したが、7月には早くもシーズン3が開始されることとなる。これはBlizzardによると、各シーズンの期間は3ヶ月程度が妥当だと判断したからだそうだ。そして発売からちょうど1年の日に、待望の
「リージョンリンキング」 が開始され、隣のリージョンとのクロスサーバでのプレイが可能となった。
初の公式拡張パック『Heart of the Swarm』の具体的な情報やメディアも6月から出始めてきている。Zergキャンペーンを中心に作られたこの拡張は、既に序盤ミッションがプレイアブルな状態になっており、そう遠くない将来に発売されることが期待されている。
StarCraft 2のニュース一覧
総括
以上、駆け足ながらこの1年を振り返ってみたものの、他のデベロッパが開発したゲームでは考えられない、変化の激しい1年間だったと言える。発売前後の出来事や当時のゲームバランスなど、遠い昔の出来事のように錯覚してしまう。
ゲームに必要な機能がひと通り揃った今、SC2プレイヤーの大きな関心は2つある。1つは
「バランス調整はどこまで続き、どこまで煮詰められていくのか」 だ。SC1はあまりにも美しいゲームバランスを誇っていたため、SC2も現状かなり素晴らしいバランスとは言え、やはり細かい部分が気になってしまう。なおSC1のバランスが完成を見たのは発売から3年後のことである。
もう1つは
「拡張パックがいつ発売になるか」 である。SC2の拡張パックはシングルキャンペーン中心の内容とは言え、マルチプレイにも新ユニット追加が予定されている。SC1にBWが追加されたときのように、セオリーが一変する可能性、そして一度離れたプレイヤーを呼び戻す可能性がある。
私は発売から1年間のBlizzardの立ち回りについては、85点くらいを与えていいと思う。最初の数カ月間の動きはやや鈍かったが、その後はコミュニティが必要と感じているものを的確に満たしてくれた。私はStarCraft
2が素晴らしいゲームだと思うし、今後も遊び続ける価値のあるゲームだと確信できる。残された問題は、今という時代がSC2という「ちょっと古いタイプのゲーム」を今後も受け入れ続けてくれるか、という点にあるように思える。
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