考察記事
「絶賛と酷評、Portal 2の評価は何故割れたか」
Last Updated: 2011.04.20 / First Edition: 2011.04.20
※:念の為に書いておくと、今回の記事はあくまで「Metacriticで起きたPortal 2批判」「Valveのビジネス」に対する考察であり、私自身のPortal 2への評価ではない。
Metacriticで割れるユーザー評価
昨日、当初の予定より早くSteamで解禁された「Portal 2」だが、多数のレビューを集めるサイト「Metacritic」での
ユーザーレビューの評価が大きく割れている。絶賛するレビューが寄せられる一方で「0点」「1点」といった評価も数多く投稿されているのである。
現時点で最もレビューが多いPC版では、メディアの平均評価 95/100、ユーザーの平均評価 7.0/10と、通常では考えらにくいほど差が開いている(発売直後はもっと低く5.0/10付近だった)。これは投稿数が少ないために極端な意見が目立っている、というわけでもなく、既に400以上のレビューが投稿されている状態での評価である。Valveの作品がここまでユーザースコアを下げるのは異例と言える。
酷評の内容
上の画像はこの記事を書いている現時点でのレビューの傾向である。点数の分布の仕方は、9点前後と1点前後のレビューが大多数を占めており、絶賛する者と酷評する者の両極端な状態になっている。
何故このような状態になっているのだろうか?低スコアを与えたレビューを読むと、大体次のような理由が挙げられている。
- Portal 2はフルプライスなのに4-5時間くらいのボリュームしかない
- グラフィックやゲーム内容に進化が足りない
- インゲームストア(Day 1 DLCとも表現されている)でさらに金を取ろうとしている
- PotatoFoolイベントは、無関係のゲームを煽って売っておきながら、リリースが半日早まっただけ
- PC版はコンソール版の移植ではないか
(セーブ時に「コンソールの電源を切らないでください」と表示される)
ちなみに
RPSなんかはこれに対して反論記事を書いており「ゲームボリュームはもっとある」「インゲームストアは無視すればいいだけ」「ゲームはPCに最適化されている」といったことを述べている。
PC版のセーブ画面に出る"Console"の文字
ハードルを上げ過ぎたValve?
ゲーム内容そのものへの評価は各人それぞれであり、いかなる評価でも「間違い」というのは存在しないので置いておく。ここで注目したいのは、ゲーム内容には直接関係ない事が引き金となって激しい批判が起きている、ということである。ゲームそのものへの純粋な評価が、ここまで両極端になるとは考えにくい。またValve製のゲームがMetacriticでこれほど低いユーザー評価を受けたのは初である。

私は、ここまで酷評が増えた理由は
Valveがあまりにもユーザーを煽り過ぎたことへの反発だと思っている。ValveはPortal 2発表当初から様々な仕込みを行い、巧みにゲームを宣伝してきた。極めつけは4月1日のエイプリルフールからの一連の「PotatoFool」アップデートである。Portal
2とは無関係なインディーズゲーム13本に仕込まれた秘密を探ることで、徐々にPortal 2の情報が明らかになるというもので、
途中経過として大量のコンセプトアートが発掘され、最後は
Portal 2の発売を早めるイベントへと形を変えた。必要なゲームは「The Potato Sack」としてSteam上で割引販売された。
しかしそもそもこのPotatoFoolイベント、あくまでARG(代替現実ゲーム)によるバイラルマーケティングなので、どうすればPortal 2の発売が早まるか、といった具体的な説明は一切なかったのである。
その解析はあくまでユーザー主導のWikiに頼られており(まあValveがこっそり誘導していたかもしれないが)、派手に騒がれた割には明確なルールが把握されることもなく進行していくこととなる。最終的に短縮された時間は半日程度であり、騒ぎの割に大したことがなかったとも言える。
そして全てのエンターテイメントで言えることだが、期待を煽ることは諸刃の剣である。高まりに高まった期待が相応の満足感に出会えなかった時、それは失望となるからだ。そもそも前作が絶賛を浴びたゲームだったので、本作のハードルは最初からかなり高かったはずである。そして期待と満足感のバランスが取れなかったユーザーの一部は酷評を始めた。それでも冷静に評価すれば、0点ではなく4,5点くらいを与えるはずだが、しかし今回はあからさまな商売絡みの仕込みがあったので、
失望は作り手への嫌悪へと形を変えてしまったのではないだろうか。
Metacriticに投稿された大多数の0点あるいは1点レビューは、明らかに感情的な意見である。そこにあるのはPortal 2への感情というより、どちらかと言えばValveに対する感情だ。恐らく時間の経過と共に今の感情が薄まることで、極端に否定的な意見は少なくなり冷静に評価されていくだろう。
商売の先進性は評価したい

思えばHalf-Life 1の時代から、Valveは様々なことを実験的に行い、成功と失敗の両方を経験してきた。常に先駆者だったわけではないが、ValveというPCゲーム業界の巨人が、自らの身で実験を行うことには大きな意義がある。私自身は商売寄りな最近の彼らの商法があまり好きではないが、しかしそれでもPCゲームがこの先生き残るためには、Valveのような存在が必要なのは確かである。
今回のPortal 2で行われた「大実験」が、ダウンロード販売やバイラルマーケティングの世界にどの程度の影響を与えるかはまだ未知数である。今回の件でValveはかなりの利益を得たはずだが、しかし同時に「自社開発のゲームでの小炎上」という汚点もまた残した。そしてそれでも恐らく、これから先もValveは色々とサプライズを用意してくるのだろう。
今後彼らが何を仕掛けてくるかは、さらに未知数である。Valveは世界で最も脳みその中身が見えないゲーム会社だからだ。
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