プレイ環境: ブラウザ
宇宙に浮かぶ小さな惑星に住む妖精が展望台から遠くを見ると、一大事に気がついた。なんと自分が住んでいる惑星に、別の惑星が迫ってきているのだ。このままでは衝突してしまう。彼はロケットに飛び乗り、衝突前に軌道を変えるべくその惑星に降り立った…
言葉や記号を極力用いずに、グラフィックとアニメーションでプレイヤーを誘導しゲームを進めていく、魅力あふれるフラッシュADV。同時に個性溢れるデベロッパ、Amanita Designの出発点となった作品でもある。
基本的にADVというものは、会話や手持ちのアイテムからフラグを立てる手順を、論理的思考によって推理・推測して進めていくゲームである。ところがこの『Samorost』では、そのいずれもプレイヤーには提示されない。ただ1枚のアニメーションする画が眼前に浮かぶだけである。
しかし画を見ていると、なんとなくクリックしたい場所が出てくる。ぽっかり空いた穴とか、スイッチとか。それらをクリックすると何らかの反応が得られるので、その反応を見ながら「次のマップに進むにはどうすればいいか」を考えていくゲームになっている。
そして『Samorost』で何かをクリックして得られる反応というのは、大抵の場合脈絡がない。突拍子も無いことが起きる。例えば木の穴をクリックすると、突然枝がニョキニョキ生えてきたりする。これを見て「横にある木も動かせば、枝が繋がって接続されるのではないか」と考えると、その通りになってゲームが先に進む。こういう問い掛けが続いていく。
本作は論理的思考によって解を得るゲームではなく、クリックした反応を見ながら「感覚」で「なんとなく」解いていくゲームなのだ。そんなのがADVとして成立するのか、と思うかもしれないが、この、フィーリングでトントン進めていく感覚が気持ちいい。
極端なことを言えば、クリック可能なホットスポットを見つけ出してその組み合わせを検証するだけのピクセルハンティングゲーとも言える。だがそういう無粋な評論を跳ね返すのがアートの魅力である。実写を取り込んだ奇妙なデザインは、画として魅力があるだけでなく、どこがクリックできるのかを浮き彫りにしてくれる。そのため画面中をクリックしまくってホットスポットを探す作業に陥りにくい。
全体的にとにかくテンポよく進んでいき、魅力溢れるアートを眺めながら、何だか夢を見ているような不思議な世界を散策する気分を味わえる。ゲームの難度は低めで30分以内にあっさり終わり、濃縮された体験がつまっている。余計な前置きなしにすぐゲームが始まり、テンポよく進んでいき、ダレる前にパッと終わる。『Samorost』はケチをつける暇すら与えない。鮮やかだ。
ゲームとしてユニークなチャレンジを提供してくれるわけではないが、まさに理屈抜きで楽しめるADV。フルボリュームを持つゲームとはまた違う余韻を残すだろう。








