Amanita Design作品の特徴
その独特のアートと、言葉を極力使わないデザインによりプレイヤーに強烈な印象を残すチェコのデベロッパ、Amanita Design。彼らのゲームで有名なのは、初のフラッシュ作品にしてネット上で大きな反響を呼んだ『Samorost』、商業作品として有料販売されPCゲーマーの間でもそれなりに知名度が高い『Machinarium』などだろう。
彼らの作品に共通する特徴は、文字を用いず見た目だけで「ここに何かありそうだ」と思わせてクリックさせゲームを進めるポイント&クリック型のADVとして作られていること。基本的にADVというのは、会話や所持品などから何をするべきかを考えるゲームである。しかしAmanita Design作品の多くは直感的にポンポンクリックしていくだけで様々な事象が発生し、それらを組み合わせていくと自然に先に進めるようにできている。
例えば『Samorost』の最初の場面では、宇宙にひたすら岩のようなものが浮いているだけである(初プレイ時、鑑賞シーンかと思ってボケっと眺めてしまった)。ここで何か目標を指示されるようなことは一切ないのだが、惑星の上にあるいかにも怪しい突起部分をクリックすると、中にいる宇宙人が透けて見えて物語がスタートするのだ。このようにAmanita Designのゲームでは、一切指示のない画だけが貼られた場面からスタートし、怪しいところをクリックすることで反応を探り先に進む方法を考えるゲームになっている。
そして何より、実写を混ぜた独特のアートが印象的である。彼らのゲームで起きる出来事は、いきなり宇宙船が出現して惑星に飛び移るとか突拍子もないものばかりなのだが、独自のスムースでコミカルなアニメーションにより、そういった突拍子もない出来事に不思議な説得力をもたせている。
今回は、そんな独特のフラッシュゲームを作り続けるAmanita Designが2003年から作り上げてきた、数々の摩訶不思議なショートゲームをリリース順に紹介していこう。なおここで紹介しているものはほとんど無料で遊べる。
Samorost / Samorost 2
2003/2005年リリース。初代はフラッシュゲームとして人気を博し、続編は製品版として発売された。
一作目は自分の惑星に別の惑星が衝突するのを防ぐため、宇宙船に乗って旅だった小さな宇宙妖精を導いていく。Amanita Designのエッセンスが詰まった作品で、ボリュームは少ないものの独特のアートに彩られた世界を一気に駆け抜けるため満足度は高い。同社のADVの中でも一番オススメの作品で、まずここから触れてみると良い。
なお2012年現在『Samorost 3』が開発中である。
Rocketman
2004年リリース。「バスケの練習をする男に研究所」という見た目通り、いきなりの奇作。ナイキのプロモーションのために作られた作品らしく、バスケットをしている男は実はNBAプレイヤーのヴィンス・カーター。
『Samorost』以上に短く広告ゲーム的な感じだが、Amanitaらしいショートゲームに仕上がっている。ストーリーはカーターの新しいシューズを科学者たちが発明し、その実験を行うというもの。果たして新型シューズの性能とは…なんだか星新一っぽいノリである。ゲームとしてはやることがほとんどないが、シュールな内容で結構面白い。
「Amanita Design豆知識」
彼らは2D Boy並に海賊版に対して寛容なデベロッパである。DRMフリーで販売された『Machinarium』のユーザーは85-95%程度が海賊だとしながらも、それを特に気に止めず「海賊版恩赦セール」を開催した。
The Quest for the Rest
2007年リリース。米ロックバンドであるThe Polyphonic Spreeのために作られたゲームで、彼らの曲が使用されている。
内容は3人の砂漠に取り残された少年少女たちを、他の仲間達の下へと導くADV。ボリューム、ゲーム内容ともにSamorostに近いが、こちらはややファンタジーっぽい世界観。安定のクオリティ。
Questionaut
2008年リリース。BBCの依頼で作られた教育用のゲームで、ゲーム自体もBBCのサイトに設置されている。
泡(?)で飛ばされた友人の帽子を取りにいくというストーリーで、それぞれのレベルの前半はこれまで通りのADVなのだが、レベルの後半はNPCの三択クイズに答えていくクイズゲームとなっている。クイズ内容はキャラによって国語、算数などに分かれており、内容的には小学生レベルの初歩的なもの。英語さえ理解できれば解くのは容易いだろう。
クイズに正解すれば燃料が溜まり、5回分の燃料で次のレベルに進むことができるが、間違えると燃料を1つ抜かれてしまう。あくまで教育ゲームなので、ADVとして楽しもうとすると退屈かも。
Machinarium
Amanitaにとって初のフルボリュームを持った商業作品。ガラクタ置き場に棄てられたロボットが恋人を探しにいくというストーリーで、これまでの実写を混ぜた背景ではなく全てが綿密に描きこまれている。
またゲームシステム的にもアイテムやアイテム同士の合成、主人公を伸縮させて手の届く範囲にあるものを拾うといった、一般的なポイント&クリック型ADVのシステムを取り入れており、そういう意味ではやや普通のゲームっぽくなったとも言える。
しかしこのデベロッパならではのセンスやデザインは健在。独特のアートスタイルや、文字を用いずに記号や絵を利用してプレイヤーを導く作りで、なかなかの成功を収めたようだ。迷ったときには2D STGをクリアすることで解答を表示するという、謎の救済措置を組み込んでいる。
Osada
2011年リリース。これを書いている現時点での最新作にして、一番評価が割れるであろう作品。というかこれはADVではなく、実験的なインタラクティブ・ミュージックビデオだと説明されている。
流れとしては画面上のどこかをクリックすることで、音楽を流しながらひたすら連想的に、脈絡なく場面が移り変わっていく作品。西部劇だと思えば現代、クイックドローかと思えば卓球、アルコールを飲んでいるやつがいきなり火を吹いて隣のやつを燃やしたりとか、とにかくワケワカメな世界。そもそも長田って誰だ?
一応、これまで通り「画を見てどこをクリックすべきか考える」というゲーム性はあるが、これは彼らのフラッシュアートが好きな人向けの作品と言えそう。ボリューム自体はこれまでの無料リリースの中では一番。
Botanicula
2012年4月19日発売予定。『Machinarium』に次ぐ商業作品。5匹の木のクリーチャーたちが、寄生され侵食された木の最後の種子を守るための旅立つ…というストーリーになる。
以上、Amanita Designの作品をスタジオ創設時のものから順番に見ていったが『Samorost』は本当に面白いし短時間でサクッと遊べるADVなのでオススメ。フラッシュ作品と侮ることなかれ。ADVを作るデベロッパとしては、今最も勢いのある集団と言っても過言ではないだろう。














