プレイ環境:PC英語版 (PC版のみ発売)
恐らく今後も2D時代のCRPGの頂点の1つとして遊ばれ続けるであろう、クラシックと呼ぶに相応しい完成度がある。
アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ第二版のゲームプレイをCRPG上で上手く再現しており、デジタルながら紙の上でセッションを進めるかのようなアナログ感がある。ダイスロールをしながらキャラメイクし、Hide in Shadowで姿を消したThiefを先行させてダンジョンの暗中を探り、Mageが多彩な呪文を駆使して血路を切り開く。古典的RPGの面白さがここに凝縮されている。時間が経過しても微塵も劣化を感じさせないのは、紙とペンだけでも楽しめるRPGの普遍的面白さが詰まっているからである。
同じInfinity Engineを使った『Icewind Dale』とは違ってフリーローミング的な作りになっており、最初は主人公1人を作り、冒険を進めながら出会ったNPCをほぼ自由に仲間にできるシステムになっている。うろつき回れる世界はそれほど大きくないものの、十分にプレイヤーの意志を尊重してくれる広さで、また全て手書きで描きこまれた緻密なグラフィックには感心する。冒険心に駆られてつい奥へ奥へと進めたくなってしまう、そんな“旅への欲求”を刺激してくれる色彩豊かなフィールドが広がっている。
『Baldur’s Gate』は「冒険を生成するためのツール」としてのカラーが濃い。確かにルート自体はある程度決まっているし、クエストがランダム生成されるわけではない。しかしキャラメイクからパーティーメンバー選択までの高い自由度に加え、あえてテンプレート的な舞台設定(例えば「呪われた炭鉱」のような)を用いることにより、ドラマツルギーに依存しない「自分だけの物語」が展開される。別の言い方をすれば込み入ったプロットを設けずにいることで、プレイヤーが脳内設定で自由に物語を補完可能な作りにしている。
システム面の評価に移る。このゲームの肝は、何と言ってもタクティカル・シミュレーションゲームばりの奥行きを誇る戦闘である。
MageやClericの呪文は使い方次第で戦況を一変させ、正面からぶつかればボロ負けする戦いを無傷の勝利に変えることすらできる。遭遇時の当たり方も重要となり、パーティーの隊列が乱れていると厳しい。ダンジョン内にはトラップも山ほど仕掛けてあるため、Thiefがそれらを探知・除去しながら、奥に潜むモンスターも警戒しなければならない。半リアルタイム制ではあるが、ポーズをかけてコマンドを出すのが基本なのでじっくり考えられる。
一方でいくらか古臭い解りづらさがあるのも事実。致命的と言えるのはAIの経路探索能力の低さに加え、味方同士の衝突による渋滞が発生する点。これのせいで、特に道幅が狭いダンジョンでは移動命令すら満足にこなせず、そのせいでキャラが死んでやり直しになるとキャラクターシートを破り捨てたくなる。
また最近のCRPGと違いゲームバランスがシビアであり、Lv.1の時は前衛ファイターであってもダイスロール次第で一撃で瀕死に追い込まれることは日常茶飯事である。Mageなど一発耐えられれば幸運と言えるほどの貧弱さ。
呪文は種類が多く、全体的に使えるものと使えないものの差が激しい。その中から有用なものを見出し、ピーキーなMageたちの性能を発揮させるのが面白いのだが、これもある程度慣れるまで上手く活用することができない。DPSを稼ぐためのMagic Missileばかり撃っていては、戦闘の奥深さは理解できないのだ。
こういったCRPGとして見るとマゾい設計のせいで、最近の親切になったゲームに比べ入口が狭いのは事実である。しかしそれは戦術性に富み、高い自由度を持っていること、即ち“本格”であることの裏返しでもある。RPGのエッセンスを豊富に含み、時が過ぎても輝きを失わない宝石のような一品。この作品をプレイしようと思ったら、いつになっても遅すぎることなどない。










