ストーリーの面白いシングルプレイ
Portalの続編を作ってしまっていいのか、という懸念が発売日までずっとあった。何故ならPortalは、面白いとは言ってもあくまで一発ネタ的であり、単体作品として完結すべき世界に思えたからだ。特にPortalの中核を成していた謎が前作をクリアした人にはバレてしまっているし、パズルもあれ以上引っ張ってもダレてしまう気がしていた。
これらの予想は、少し捻った形で裏切られた。
まずシングルプレイだが、前作に比べてかなりストーリーに重きをおいたゲーム内容になっている。そのためアドベンチャーゲームをプレイしている感覚に近い。確かに時間的にはゲームプレイの大部分はパズルを解くことであり、従来の物理法則利用に加え、液体の性質を加えたパズルなどが加わり面白いとは思う。思うが、やはりPortal 1をプレイしたときの驚きには遠く及ばないというのが正直な感想で、全体としてパズルの比重がかなり軽くなっている印象を受ける。
で、これでストーリーがつまらなかったら期待はずれで終わったのだが、これが面白い。Portalらしく皮肉とユーモアの混じった密度の濃い掛け合いは実に可笑しく、物語全体はスピード感に溢れている。特に今回のPortal 2で多用されている「キャラの台詞に呼応して周囲の壁や天井がダイナミックに動く演出」は、単純ながらかなり迫力を感じさせゲームのスピード感、緊迫感を大いに強めている。
問題は、パズルの面白さがストーリーの盛り上がりについて来れず、主従の逆転とも言うべき状態に陥っていることだ。例えば序盤にやらされる前作の「おさらい」のパズル群には大して面白味がないし(これは続編の抱える宿命とも言える)、中盤以降の新機軸を盛り込んだパズルも、ストーリーのテンションについて来れず、正直なところ、少しばかり邪魔にすら感じる。前作は全てのテストを終えた後、怒涛の展開からそのテンションを切らさず一気に終わりまで突き進んだが、Portal 2ではぶつ切りになっている印象である。
Portal 2のシングルプレイは、ストーリーは2.0として申し分ないが、パズルは1.5くらいの領域にとどまっている。この辺、やはりシングルプレイゲームとしてPortalの続編を完璧に作るのは無理があったように思う。

パズルの面白いCo-op
しかしここからがユニークな点なのだが、前作にあったパズルとしての新奇性・意外性は、Co-opという形に変わってPortal 2の中に受け継がれている。
簡単な仕様を説明しておく。最大プレイ人数は2人までで、片方はATLASに、片方はP-Bodyにランダムに振り分けられ、2人同時にゴールまで辿り着くことを目的とする。それぞれのプレイヤーは2つずつポータルを作ることができ、計4個のポータルを駆使してパズルを解かなければならない。
パズルのピースがプレイヤー側だけでも2倍に増えているため、普通に作れば必然的にシングルプレイより難しいパズルになるはずである…が、この協力パズルは想像していたより遥かにテンポ良く解くことができる。難度的な話をすれば、Co-opのパズル難度はシングルプレイ時とそう変わらないだろう。これはもちろん「協力パズルという複雑な代物でも、シングルプレイと同じ難度、テンポに調整したValveは素晴らしい」という事実を示しているが、同時にPortal 2のCo-opに隠された、もう1つの美しい側面をも示している。
それは「ブレーンが2つ存在することで、パズルは飛躍的に解きやすくなる」ということだ。2人のプレイヤーは隔離された場所で並行して問題を解くわけではない。同じ空間に存在し、同じPortal Gunを持って一緒にパズルを解いているのである。例えばこういうことがあった。私がゴールまで辿り着くために必要なピースの40%を集めたが、そこから先が分からず悩んでいると、相方の彼が私の集めたピースを基に発想を伸ばし、残りのピースを集めてくれたのだ。実際、もし2台のPCを用意してCo-opモードを1人で遊べば、協力したときよりずっと時間がかかるはずだ。
Portal 2のCo-opは、単に役割分担し合ってパズルを解くことだけが楽しいのではない。2人の知恵を寄せ合い、かけ合わせて問題を解く過程にこそ、その醍醐味がある。
そもそもパズルゲームというものは大半が1人で遊ぶように作られているので、これは新鮮な体験だ。しかもPortal 2は平面のパズルではなく、立体的な空間パズルである。2人のプレイヤーが同一の3D空間にいるということは、それぞれが異なった角度でパズルを観ているということで、そこから新たな考えが浮かぶこともある。Portal 2のCo-opは、その内容を聞いて頭で想像してみるよりかも、実に様々な点で「協力」が発生するゲームである。
オンラインでCo-opを遊ぶ際に問題になるのは意思疎通の手段だが、これも上手く解決されている。Pingツールと呼ばれるものが用意されており、これで指し示した地点に「このボタンを押して欲しい」「ポータルを作って欲しい」といったアイコンを表示させることが可能になっている。当然ボイスチャットもあった方がいいのだが、私の場合ではオンラインでランダムに組んだ相方とテキスト・ボイスチャット無し、Pingツールでの意思疎通のみで問題なくパズルを解くことができた。
協力パズルが抱える致命的欠点
さて、ここまでCo-opで実現したPortalの新たなパズルの可能性について良い点を述べてきたわけだが、最大の問題点についても話さなければならない。それは上記のような美しい協力関係による問題解決の楽しさは「そのパズルを初めて解くプレイヤー同士」でないと生まれないということだ。
逆に言えば、どちらかが既に解法を知ってしまっている場合、Co-opモードの楽しさは崩壊する。その場合では、解法を知っている側が一方的にパズルを解いていき知らない側が白けるか、はたまた解法を知っている側がわざと知らないフリをして「お付き合い」をするか、という薄ら寒い協力関係しか生まれないのだ。
そして現バージョンのPortal 2では、この致命的な欠点を克服出来ていない。フレンド同士であらかじめ打合せしておけばともかく、オンラインでランダムにパートナーを組む際には、マッチメイキングでどこかの誰かと自動で組まされることになる。そしてその相手が自分と同じ進捗状況である保証はどこにもない。実際、Co-opを途中まで進めてから、後でオンラインの誰かとやり直そうと思うと、かなり困ったことになる。
これを解決する手段は、今のところCo-op未体験のフレンドを確保しておくしか手がない気がする。
総評
シングルプレイのみで評価する場合でも、十分に面白いと言っていい。しかしその完成度は残念ながらPortal 1には及ばない。シングルプレイとCo-opの両方を併せれば、その楽しさと感動の総量はPortal 1に匹敵すると言っていい。この作品は、全てを体験して初めて「Portal 2」として完成した楽しさを味わえる。







