Minecraft 批評、これは新しいサンドボックス型ゲームの在り方かもしれない

2011年1月7日

Minecraft概要

ほぼ無限に自動生成される世界を舞台を1人称視点で動き回りながら、土を掘り、岩を砕き、洞窟を作り、家を作り、プレイヤーが自分の思い通りの世界を作れる純粋なサンドボックス型のゲームである。

プレイヤーは何も持っていない状態でランダムに作られた地形のどこかに投げ出され、夜になるとモンスターがスポーンし襲いかかってくる。そうなる前に洞窟を作るなり家を作るなりして自分の身を守らねばならない。ただ別に死んでも最初の地点から何度でもスポーンできるし、またゲームに最終目標のものは(少なくとも現段階では)何も用意されていない。広い土地を用意しました、発想次第で無限に何でも作れます、さあ好きに遊んでね、というゲーム。

モンスター以外の数少ないゲーム的な要素としてアイテム生成がある。例えば画像のように木を切って棒を作り、岩を砕いたものを作業場の上で特定の順番に並べると「つるはし」を作ることができる。並び方を変えると「くわ」「斧」「剣」にもなり、採掘作業や建造の手間が軽減される。

このアイテム数は相当あり、素材さえあればトロッコやコンパスなど色々なものを生成することが可能。自然のままだと土や岩くらいしか手に入らないのだが、それらの素材を使って様々なアイテムを生み出すことで、その気になればビルのど真ん中に溶岩のプールを作るとか何でもできてしまう。

 

Minecraftの面白さ

で、いきなり無責任極まりない結論を吐いてしまうと、このゲームの面白さを文章で伝えるのには限界がある。実際私は、購入前にネットの紹介文を読んだりしてみても今ひとつピンとこなかった。しかし実際に触れてみると、その魅力が5分で理解できる、という不思議なゲームになっている。

このゲームの面白さを言語化するのが難しいのは「Minecraft自体には『面白さ』が存在しない」からだろう。Minecraftはサンドボックスというジャンルを飛び越えて、ゲームというよりかは、むしろツールに近い。何しろこのゲームには目標らしきものがない。Sim Cityでさえ街を大きくするという暗黙の目標みたいなものが存在するが、Minecraftにあるのは「~ができる」という「可能性」だけだ。

ではMinecraftは一体どのように『面白さ』を生み出しているのだろう。思うにMinecraftとは、プレイヤーのインスピレーションを巧みに刺激し、創造力を発揮させることでプレイヤー自らに『面白さ』を生み出させる、というサイクルを繰り返すゲームである。このプレイヤーの刺激の仕方が実に隙がなく、なかなか抜け出せない中毒性の高さが一般的な箱庭・サンドボックス型ゲームとはレベルが違うと感じる。

本作が生み出す「面白さのサイクル」の一例を挙げよう。プレイヤーが夜を避けるため、一心不乱にトンネルを地下深くへと掘っていたとする。するといずれ、トンネルはランダム生成された天然の洞窟にぶつかり、目の前には巨大な地下空洞が開けるだろう。

この空間を見たプレイヤーは何を思うだろうか。その広さに感動して地下に隠れ家を建てたくなるかもしれない。あるいは奥深く続く暗闇からモンスターが発生しないように、地下道に松明を設置していきたくなるかもしれない。そうこうしていたら、今度は石材が溜まってきた。自分が下ってきた長いトンネルを見て、この石材でトロッコを作れば地上との往復が楽になるかもしれない、と考える。レールを地上まで引き終わると、いや地上まで移動するだけでは勿体無い、天高くそびえる塔を作って、その周辺をトロッコでグルグル回れれば面白いかもしれない…

と、このように、Minecraftでは一度インスピレーションに火がつくと、それをキッカケに次々に「やりたいこと」が見つかるように作られている。本作をプレイしていると、止め時が見つからずにあっという間に時間が過ぎていく、とよく言われる。それはこの「ランダム生成された何かにぶつかる -> 着想を得る -> 作業する -> 資源が溜まったので新しく何か作る」というループに入ることで、いつまで経っても「やりたいことがまだある」状態から抜け出せなくなるためである。これはCivilizationでゲームを止められなくなる原理に似ていると思う。

Minecraftでは『面白さ』を生み出す機構はゲームの中にはない。『面白さ』を自動生成するのはプレイヤーの脳であり、それを利用していつまでも『面白い』がループするように作られている。生み出される『面白さ』は、それぞれのプレイヤー固有のものである。だから最初に書いたように、それを一般化して「xxだからこのゲームは面白い」と説明することは難しいのだ。例えば自由に絵を描く楽しさは誰もが理解できるが、何故面白いのかを一般化して説明するのは難しいだろう。

他の視点から見た場合の評価

これと似たようなサイクルを発生させるゲームは他にもあるが、Minecraftにはさらにいくつもの美点がある。

まず基本的なゲームルールがシンプルに抑えられているので、誰にでも分かりやすく、ややこしいルールや制限で発想が阻害されることがない。Minecraftのルールは、ただ目の前にある土なり岩なりを掘って、それをレゴブロックのように積み立てて自分の好きな物を作る、というただこれだけで、子供でも短時間で理解できる。この親しみやすさがヒットの要因となったのは間違いないだろう。

またアルファ版の時代から、夜にはモンスターが出現するようになっているが、これがさり気無くプレイヤーの行動に指針を与えていて素晴らしい働きをしている。モンスターが意味することは「Minecraftでは身を守る場所を作らなければならない」ということだ。

これがゲームを開始した時に洞窟を掘り出す動機になるし、新しいエリアについた時にもまず「建物を建てたい」という思いを抱かせる。逆にモンスターのような脅威が存在しない場合、多くのプレイヤーはアイディアを早々に枯渇させてしまうだろう。必要は発明の母なのである。

そしてマルチプレイ

ここにも本作ならではの面白さがあり、人によってはマルチプレイがメインになるかもしれない。本作のマルチプレイは小型MMOのように作られており、基本的にただ同じ空間に集まって共同作業するだけなのだが、サーバを維持している限り、いじくり回したマップは維持されるようになっている。

つまり各サーバはそれぞれ先人たちが作ったマップの展示場のようになっていて、後から加わったプレイヤーも自由にそれらの「作品」に加筆できる、という作りだ。ここにも一種独特の面白さが漂っている。現在はまだ開発途中だったり、サーバによって導入Modが全然違っていたりと不安定な状態なのだが、単純に他人の作品を鑑賞するのは面白く刺激になり、単に色々なサーバを渡り歩くだけでも楽しめる。

総評

最初にBeta版の批評を書いた時、私は「Minecraftには、まだまだいくらでも拡張する余地があるように思う。プレイしていると『あんなことができればもっと面白いのに』ということは無限に見つかる。だからこのゲームはこれからも発展し続けていくだろう」と書いた。

それからこの記事を書き直すまでの一年間、実に多くの機能やアイテムがアップデートによって実装され、それらは概ねゲームの面白さや自由度を増幅する方向に作用している。Alphaから既に高い完成度を誇っていた本作は、その後1年半の間にさらに大きく拡張された。

しかしそれでもこのゲームの天井はいまだに見えてこない。まだまだいくらでも「もっとこういうことができればいいのに」で溢れている。だからこう予想することができる。『Minecraft』は――あるいはその続編か、そのクローンたちは――これからも進化をし続けるだろう、と。正式リリースされたとは言え、この小宇宙はまだ最初の一歩を踏み出したばかりなのかもしれないのだ。



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