2007年に発売され、話題となった異色作品『Portal』は実際優れた作品だった。FPS的な操作方法と、ビデオゲームの特徴を最大まで活かした空間的なパズル、そして魅力的なプロットに当時のゲーマーの多くが驚愕した。そしてその後、いくつかのゲーム作品の中にPortalへの影響を見ることができたが、そのどれもが「次なるPortal」になり得なかった。
今回紹介する『Prometheus』は、その傑作に真っ向から挑戦したFirst Person Puzzlerである。しかもUT3のModとして。さらに最新版v4.0では、無料公開されたUDKを利用して即座にスタンドアロン作品として作り直され、フリーゲームとして誰でも遊べるようになっている。プロジェクトリーダーのRachel Cordoneは、UT99の頃からカスタムレベルやMutatorを作り続けたベテランデザイナーだ(ちなみにPortalのカスタムレベルも作っている)。
Prometheusを実際にプレイしてみると、第一印象で誰もがPortalを連想するだろう。それくらい両者の雰囲気は似ており、Portalを非常に意識した作品であることが伝わってくる。だがPortalが「空間」をテーマにしていたのに対し、Prometheusは「時間」をテーマにすることで、両者のゲームプレイは全く別物となっているのだ。

Prometheusは「過去の自分と未来の自分が、同一の時間軸で協力してパズルを解く」ゲームである。主人公は女性エージェントであり、彼女は「時間を巻き戻して『過去の自分』と『今の自分』に分離する」能力(短時間のタイムスリップに近い)を持っている。その能力を駆使して、FPSのCo-opでよくある「複数人いないと解けない仕掛け」を1人で解いて進んでいくことになるのだ。
実際にプレイしないと実に分かりにくいのだが、要約すると以下のようなルールで進行する。
- 毎回どこかの建物のセキュリティを破って内部に侵入することになり、味方は誰一人いない
- 建物の内部は複雑な仕掛けやトラップで厳重に固められている
- プレイヤーは1-2分程度の時間の巻き戻しを規定回数だけ行え、巻き戻しをするとスタート地点に戻る
- 巻き戻し後の世界で「過去の自分」は、実際にプレイヤーが行った行動をそのままトレースしている
- 巻き戻した回数だけ「自分」は分裂していくので、最終的には4-5人の「自分」が同時に動き出すことになる
- この性質を利用して、複数の「過去の自分」と同時に建物の内部へ侵入しミッションを完了する
- 「過去の自分」が死んでも「今の自分」は死なず、任務を続行できる
乱暴に表現するなら1人 Co-opである。
例えば2人が同時にスイッチを押さないと開かないドアを開けたいとしよう。この場合「過去の自分」と全く同じ時間にスイッチを押せばドアが開き、さらにもう一度時間を巻き戻して、2人の「過去の自分」が2つのスイッチを抑えている間に「今の自分」がドアを通過してしまえばいい。また「過去の自分」が仕掛けを解いた後に敵に見つかってしまう運命なら、その「過去の自分」を殺すことで警報を鳴らさせない、という不思議なタイムパラドックスを発生させることもできる。

実際にやってみると、このゲームプレイ感覚は想像以上に奇妙である。Prometheusをプレイするとき、目の前の「過去の自分」の尻を追いかけながら、誰もがこう思うだろう。「過去の自分、しっかりしろよ!」と。同時にスイッチを押すつもりが「過去の自分」は自分が到着する前にさっさと先に進んでしまったり、スイッチを押すタイミングが合わなかったり、ということは日常茶飯事だ。
そしてそのようなヘマをしたのは紛れもなく自分自身なのだが、その様子を同一時間軸に存在する「過去の自分」という”他人”として見せ付けられ、振り回されてしまう非現実的感覚こそ、実はこのPrometheusの最も面白い部分なのである。
時間旅行映画「Back to the Future Part II」では、主人公マーティが同じ時間軸へタイムトラベルしてきた「過去の自分」と遭遇し、振り回されてしまう印象的な場面がある。Prometheusのプレイヤーは、まさにマーティと同じ気分を味わえるのだ。Prometheusは擬似的・部分的なタイムトラベルのシミュレータと言えるかも知れない。むしろゲーム本来の目的やパズル的な面白さよりも、このタイムトラベル体験の方がよほど新鮮で愉快である。
逆に言えば、Prometheusはパズルとしてはややこしく面倒くさい面が大きい。序盤のレベルはまだ単純なのでいいのだが、追加レベルともなると「過去の自分Aは何分何秒にどこどこのスイッチを押した」という細かいことまで考えなければならないし、解法も限られている。ここは今後の課題だろう。無責任にゲームの広がりを期待させてもらうなら、パズルに拘らずにフリーローミング系のゲームにこのアイディアを転用するともっと面白くなるかも知れない。
Portalを徹底して意識しつつも、核となるテーマを「空間」から「時間」へと反転させることで全く異質のゲームプレイを生み出した本作は二重に面白い作品であり、Portalへの鋭い切り返しと言える。様々な点で非常にスマートな作品であるPrometheusは、誰もが一度は体験すべき傑作だろう。
導入
ダウンロード (フリーウェア):
FileShack/Mod DB
プレイ方法:
インストールフォルダのUDK\Prometheus\Binaries\にあるUDK.exeから起動







